三分岐離散曲面に関する幾何学の研究を行った. 特に,3次元ユークリッド空間内の三分岐離散曲面に対して,その頂点ごとの曲率を定義した.この研究は、炭素構造がなすネットワ ークを幾何学的に考察することを目的として、その幾何学的実現としての三分岐離散曲面を定義し、その物性を幾何学的な言葉で書き 表すことを目標とした研究の第一歩である。その中では、カーボン・ナノチューブ、フラーレン、マッカイ結晶などを例としてあげ、 材料科学及び有機化学で「負曲率炭素構造」と呼ばれているマッカイ結晶が、実際に負曲率を持つことを示した。また、フラーレン(C 60)は正の低曲率曲面であることも示されている。 さらに,三分岐離散曲面に対して,複数の種類の細分を定義した.標準実現された三分岐離散曲面の細分列が,どのような条件の下に 連続曲面にハウスドルフ収束するかを考察し,極小エネルギーによる細分列の場合には,標準実現三分岐離散曲面が連続曲面にハウスドルフ収束することを証明した. この研究は小谷元子氏(東北大学)と大森俊明氏(当時:東京理科大学)との共同研究である. また,領域中に異なる熱伝導率をもつ領域があるとしたとき,その領域のラプラシアンの第一固有値が最小となる領域配置を考察した.これは,異なる熱伝導率を持つ物質を配置したときの全体の熱伝導性が最も高くなる最適配置を求める問題と考えることができる.この研究は松江要氏(九州大学)との共同研究である.
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