調和写像はRiemann幾何学において重要な対象として長い研究の歴史をもつ。EellsとLemaireは調和写像の拡張として、二重調和写像の概念を導入した。二重調和写像は、張力テンソル場の二乗ノルムの積分量として定義される二重エネルギー汎関数の臨界点として定義され、そのEuler-Lagrange方程式は二重張力テンソル場が消えることとして与えられる。これは4階の非線形偏微分方程式系であり、その解析は困難である。我々はまず、Riemann多様体において平均曲率ベクトル場が平行であるような部分多様体について、二重調和になるための必要十分条件を与えた。コンパクトLie群Gに対して二つの対称部分群KとHを考える。このとき、コンパクト対称空間G/KへのHの等長的な作用はHermann作用と呼ばれる。我々は可換なHermann作用の軌道の第二基本形式を記述することにより、これらの軌道が二重調和になるための必要十分条件を重複度付き対称三対を用いて表した。さらに,対称三対の型と重複度の分類をもとに,既約なコンパクト型対称空間への余等質性2の可換なHermann作用の軌道の中で二重調和になるものを分類した。これにより、コンパクト対称空間内において余次元の高い二重調和等質部分多様体の例が数多く得られた。特に、コンパクト型Hermite対称空間において二重調和な等質Lagrange部分多様体を構成した。さらに、可換なHermann作用に付随して定まる、コンパクトLie群GへのH×Kの両側からの作用についても、軌道の第二基本形式を重複度付き対称三対を用いて記述することができる。これにより、コンパクト単純Lie群Gにおいて、H×Kの作用の軌道の二重調和性を調べ、二重調和等質超曲面となる軌道の分類を与えた。これらの結果は大野晋司氏(大阪市立大学),浦川肇氏(東北大学)との共同研究による.
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