研究課題/領域番号 |
26400074
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長友 康行 明治大学, 理工学部, 教授 (10266075)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ベクトル束 / ゲージ理論 / 調和写像 / 正則写像 / モジュライ空間 / 表現論 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、研究代表者による高橋の定理の一般化を利用した、do Carmo-Wallach理論の拡張に成功していたが、今年度はその理論の有効性を示すために、計画通り具体例の構成、およびその他の話題に理論が適用できるかどうかを試行した。 まず強充満性という概念を定義し、Einstein-Hermite(以後E-H)正則写像の剛性を証明した。また、複素射影直線から複素二次超曲面への調和写像に対して上記の理論を適用した。その結果、正則等長写像の場合に確立されたゲージ同値性と像同値性の関係が、定義域をコンパクトケーラー多様体としても成立することを示せた。さらに複素射影直線から複素二次超曲面への全実等長写像に関しても、E-H性を満たすものと、満たさないもの二つの例を構成し、それぞれその剛性を証明した。そのような全実等長写像の一意性予想が存在したが、これを覆すこととなった。一般に二つの写像が像同値であるかどうかを判定することは、特に部分多様体としての不変量が消える場合には困難であったが、本研究で導入された平均曲率作用素を用いれば、この判定が容易になる場合があり、予想に対する反例を挙げられたのは、今回がまさにその場合であったことによる。また、複素射影空間から複素二次超曲面への調和写像に関しては、E-H性を満たすことと、複素二次超曲面から複素射影空間への写像と先の調和写像を合成した写像が調和写像となることが同値であることを証明できた。一般に調和写像と調和写像の合成写像は調和写像とはならないが、E-H性を持つ調和写像は正則写像に似た特殊な性質を持つことを発見できたのである。 最後に複素射影空間から複素ベクトル空間の2次元部分空間からなる複素グラスマン多様体への正則写像の内、同変性を持つ写像を分類することに成功した。これも高橋の定理の一般化により、ベクトル束の不変接続の分類に帰着される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、今年度は一般論の進展よりも、これまで構築してきた理論がどの程度有効であるかを見極める年度であった。 この観点からは、期待通りに成果を出すことができ、さらに従来の方法では判別できかった対象を、この理論において定義された不変量により、判別可能となったので、かなり順調に研究が進展していると判断した。また、研究代表者によって一般化された、do Carmo-Wallach理論を越えた枠組みで、成果が出たことも研究の進展を計る材料となるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
一般論のさらなる進展とともに、この理論の応用例においても、従来の方法では発見できなかった成果を出すことに成功しているので、しばらくは両面を視野に置いて研究を推進していきたい。もちろん、一般論の進展には、豊かな具体例が欠かせないので、両面とは言え、それらは表裏一体である。 そこで、たとえば、複素射影直線からグラスマン多様体への正則写像のモジュライ空間とともに、正則写像ではない調和写像のモジュライ空間を記述することはひとつの具体的な目標である。 また、それとともに、定義域のリーマン多様体もさまざまなコンパクトリーマン多様体を対象として、考察していきたい。
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