研究課題/領域番号 |
26400077
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秋田 利之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30279252)
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研究分担者 |
吉永 正彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467647)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Coxeter群 / 交代群 / Artin群 / 写像類群 / 群のコホモロジー / 消滅定理 |
研究実績の概要 |
本研究ではCoxeter群、Artin群、閉曲面の写像類群のコホモロジー、とくにそれらの整数係数コホモロジーとmod pコホモロジーを主な研究対象としている。本年度はとくにCoxeter群およびCoxeter群の交代部分群(alternating subgroup)と呼ばれる部分群の(コ)ホモロジーに焦点を当てた。 まず、前年度に既に得られていたCoxeter群のp局所的(p-local)なホモロジー群に対する消滅定理を改良することに成功したので、結果を論文にまとめて学術雑誌に投稿した。ここでp局所的なホモロジーとは有理整数環の素数pにおける局所化を係数とするホモロジーを指す。 次いで、有限Coxeter群の交代部分群のmod pコホモロジーに対する消滅定理を証明することができた。交代部分群は交代群の一般化であるが、Kleshchev-Nakano (2001)とBurichenko (2003)は独立に交代群のmod pコホモロジーの消滅定理を証明していた。本研究の結果は彼等の研究を著しく一般化したものであり、証明の手法も全く異なるので、彼らの結果の別証明を与えたことにもなる。さらに同様の消滅定理をある種の無限Coxeter群(アファインCoxeter群、ココンパクトな双曲的Coxeter群など)の交代部分群に対しても証明することができた。 これらの結果を九州大学、東京大学、京都大学、バンコク(タイ)のKasetsart大学などで講演した。なお交代部分群に関する結果は現在論文に取り纏め中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交代群のコホモロジーは対称群のコホモロジーに比べて難しい研究対象で、これまで得られている結果も少ない。そのため交代部分群のコホモロジーもCoxeter群のコホモロジーに比べて難しいだろうと考えていたが、予想に反して交代部分群に対する消滅定理を得られたのは、当初の計画以上の進展と言えよう。また新たな成果は得られてはいないものの、当初の計画通りホモロジー安定性に関する理解も深まった。一方で、特性類に関する研究は研究計画に比べてやや遅れているが、総合するとおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は(1)ホモロジー安定性、(2)特性類の二つのテーマを軸に研究を進めていく。(1)については、まず中岡稔氏によって証明された対称群のホモロジー安定性の別証明を得ることを主な目標とする。具体的には「Salvettiによって構成された自由分解」、「Coxeter複体に同伴するスペクトル系列」をもちいた二つの異なる別証明を目指す。(2)については、有限鏡映群のTits表現の特性類と写像類群の有限部分群の特性類を主な対象とする。前者については、対称群のChern部分環はTits表現のChern類で生成されることが知られているが、有限鏡映群の場合に同様の事実が成り立つかどうかを調べる。後者については現在までに得られている結果を精密化し論文にまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に韓国に出張する予定が、訪問先の相手の都合により取りやめになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を用いて、本年度後半に韓国に出張する予定である。
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