研究実績の概要 |
関数空間の等長変換に関する研究を行った。三浦毅氏との共同研究及びそれに続く研究において、等長変換が双対空間に導く写像の詳細な解析を行い、等長変換の一般形を決定し更に荷重合成作用素として表すための十分条件を得た。その結果いくつかの新しいタイプのバナッハ・ストーン型定理を得た。(1) 特徴的なトポロジー(位相的剛性あるいは低次元性)を持つコンパクト空間上の連続関数空間の間の等長写像 (2)バナッハ空間値関数空間やバナッハ空間束の連続切断空間の間の等長写像, それぞれについて一般荷重合成作用素としての特徴付けを与えた。 古清水大直・三浦毅氏との共同研究で単位閉区間上の連続微分可能関数空間上のバナッハ・ストーン型定理を得る為の統一的な枠組みを提示した。次に得られた結果をコンパクトリーマン多様体上の連続微分可能関数のなす関数空間に拡張した。多様体とその部分多様体から決まるノルムを導入し、関数空間上の等長変換で定数値関数および滑らかさを保存するものは、底空間の等長変換が導く一般荷重合成作用素であることを示した。従って上述のノルムに対する関数空間の等長類は、底空間の幾何に加えて部分多様体の埋め込みの等長類をも一意に定めることが結論できる。このことは従来気づかれなかった知見である。この結果を応用して、ノルムの適当な連続摂動に付随する等長変換群の変形を記述することができる。その結果底空間のリーマン多様体の幾何-特にその負曲率性-が等長変換群の摂動に影響を与えていることを示すことができた。 多価写像によって定義された一般射影極限のトポロジーについてJudy Kennedy氏と共同研究を行った。極限空間が無限生成の(コ)ホモロジー群を生み出すような条件を明らかにした。更に定義写像の多価性を積極的に用いることによって興味深い位相力学系(例えばカントール集合上の極小力学系)を生むことを明らかにした。
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