研究課題/領域番号 |
26400087
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐治 健太郎 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70451432)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 特異点 / モラン特異点 / カスプ辺 / スワローテイル |
研究実績の概要 |
スワローテイルの像域の等長変形のみを使った標準形を構成した。これは長年懸案事項とされてきたが、微分の核方向が特異点の上で恒等的に消えることを用いて、そのような性質を持つ関数の形を整理することにより得ることができた。これを用いて過去に得られていた不変量がスワローテイルを定めるジェットの中で、どのような位置づけとなっているかを明らかにした。また、これを用いることで多くの不変量を構成した。さらに、スワローテイルの近傍で、幾何的に定義される3種類の二重方向場(曲率線方向、漸近方向、特性方向)のジェネリックな振る舞いを決定した。カスプ辺のときには現れなかった折れ鞍点、折れ結節点、折れ焦点が現れることがわかった。さらにこれらが現れる条件も決定した。モラン特異点に関する判定法を応用して、判定法の条件を満たすようなベクトル束の準同型写像をモラン特異点として定義し、様々な幾何的設定の下で、もとのモラン写像との性質の違いを調べ、幾つかの結果を得た。 カスプ辺の枠による研究をスワローテイルの場合に拡張する研究を行い、枠が沿っている曲面の特異点がそれ自身、特異点を持つ場合でも同様の理論を通用できるように整備した。それにより、スワローテイルの不変量の幾何的意味をより詳しく明らかにすることができた。また、スワローテイルが可展面で近似される場合に、より高次に近似されるようなスワローテイルを構成した。 昨年に引き続きコーエンデリンクの定理の拡張を試み、幾つかの結果を得た。これは見ることにより曲面をどう認識できるかを調べているものであり、数学以外の分野との関わりへの手がかりが得られたと考えられる。 カスプ的交差帽子に対して、その上の関数の分類を行い、カスプ辺の場合との類似性及び相違性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
懸案事項であったスワローテイルの等長変形のみを使った標準形が構成できた。さらにこれを用いてスワローテイルの不変量を調べ、さらにジェネリックな幾何的二重方向場の振る舞いを決定することができた。これを使うことにより、カスプ辺に対して行われたように、スワローテイルの不変量が構成でき、等長変形など様々な研究をすることができると思われる。また、枠を用いた理論についても、スワローテイルに対して適用でき、関連する様々なことを明らかにできた。コーエンデリンクの定理に関する研究も着実に進捗しており、数学と曲面の知覚による認識との関わりについて今後の手がかりを与えることができている。 以上のことからおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き予定通り特異点の使いやすい判定条件を作り、それを用いて写像の幾何的性質を調べる。まずは余階数2の特異点に関する使いやすい判定法を得ることを目指す。カスプ辺やカスプ的交差帽子、スワローテイルに関してはこれまでの研究成果で一通りの道具立てが出揃った感がある。これらを用いて微分幾何的性質をさらに深く調べる。 コーエンデリンクの定理に関して、引き続き組織的な研究を行い、曲線・曲面に関して視覚によりどのくらいの情報を得ることができるのかを詳しく明らかにする。 モラン特異点の判定法を応用する研究も続け、様々な枠組みでベクトル束間の準同型を調べ、特異点を解析することにより、そこに現れている特異性の解明を目指す。同時に、特異点の大域的なつながり具合とベクトル束の位相的性質の関連を調べる研究も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究連絡を効率的に行ったところ、研究連絡の回数を少なくできた。また、研究の進捗状況からみて、3月に予定していた研究連絡は4月以降に行ったほうが大きな効果が見込めた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、予定していた研究連絡を行う。また、主に海外の共同研究者との研究連絡・学会参加および国内の研究者との研究連絡・学会参加に使用する。
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