研究課題/領域番号 |
26400093
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
相馬 輝彦 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50154688)
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研究分担者 |
今井 淳 千葉大学, 大学院理学研究科, 教授 (70221132)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クライン群 / 双曲多様体 / 微分同相写像 / 遊走領域 / 歴史挙動 |
研究実績の概要 |
3次元双曲多様体に関する剛性定理の研究をした.特に体積と双曲構造との関連について調べた.全退化している曲面クライン群による双曲空間の商として得られる双曲3次元多様体が,曲面の3次元有界コホモロジー上で定義される基本類によって完全に分類されることが証明できた.この証明の特徴は,強力なクライン群の剛性定理であるミンスキーのエンディング・ラミネーション定理を利用していないことである.申請者の手法は,体積によって双曲構造が決定されるというグロモフ・サーストンの原理の無限体積版である.証明で使用した双曲的性質は「3次元双曲単体が最大体積を持つための必要十分条件は,その単体が理想正単体である」のみである.現在は,この手法のさらなる進化を目指している.その成果を使い,エンディング・ラミネーション定理自体も証明できると考えている.ミンスキーによる元の証明は,曲線複体の理論の基礎に置くものであるから,もし申請者の試みが成功すれば,全く異なる見地からこの定理が理解できることになる.それゆえ,その価値は非常に高いと判断できる. 2次元および3次元多様体上の微分同相写像を,力学的な立場から調べる研究も着実に進行している.特に,遊走領域や軌道の歴史挙動との関連についての結果は,力学系の研究者グループで注目されつつあるように感じられる.昨年度は,桐木紳氏(東海大学教授),中野雄史氏(北見工業大学特任助教)との共同研究で,異次元サイクルを持つ3次元微分同相写像は,遊走領域もつ微分同相写像で,任意に近似できることを証明した.また,2次元微分同相写像に関する創発性の研究も同時に進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無限体積の双曲3次元多様体の剛性定理に関する研究は,着実に進行しているように思える.微分同相写像の力学的立場からの研究も,昨年度発表した論文で構成した2次元微分同相写像が,いろいろな方面に応用できることが分かってきたので,さらにその研究を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
(1)3次元双曲幾何学に関しては,無限体積を持つ双曲3次元多様体の「体積」と双曲構造との関連についてさらに深く調べる. (2) 力学系の研究に関しては,桐木紳氏,中野雄史氏と共同で微分同相写像の歴史挙動および創発性についての研究をさらに進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2月にポルトガルとスペインに研究者と研究成果に関し意見の交換をする予定であった.しかし,首都大学東京で開催された日本数学会年会の大会委員長となったため,ポルトガル出張の期間が短くなり,またスペインへの出張を断念せざるを得なかったことが主な理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の最終年度であるので,なるべく多くの国内外の研究者と面談し研究成果を積極的に紹介していく.
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