本研究課題は3次元多様体上の微分同相群の研究である.2018年度の具体的な成果の一つは,ヘテロ次元サイクルをもつ3次元微分同相写像が,非自明な遊走領域をもつための必要条件を与えたことである.そのとき使用した主要なアイデアは,固有値が虚数の2個のサドル点からなるヘテロ次元サイクルをもつ微分同相写像を,一般化されたホモクリニック接触を持つ微分同相写像で任意に近似させることであった.また,3次元空間上の幾何的 Lorenz フローに関するヒストー的挙動について研究した.この場合,ヒストリー的挙動をもつ前方軌道の起点集合の Lebesgue 測度は零であることが,V. Araujo 等(2009) によって既に証明されているが,本研究では,その起点集合が Baire の意味で residual な部分集合を含むことが証明できた.また,桐木紳氏(東海大学教授),橋本忍氏(首都大学東京大学院生)との共同研究で,サドル焦点を持つ3次元微分同相写像の moduli の研究をし,適当な条件の下で,サドル焦点におけるこの写像の固有値が moduli であることが証明できた.その他には,桐木紳氏,中野雄史氏(東海大学講師)および Bablo Barrientoss 氏,Artem Raibekas氏(何れもブラジル,ニテロイ大学助教授)との共同研究で,3次元以上の多様体上の微分同相写像の generic な族で,次の性質を持つものの存在が証明できた.「2個のヘテロ次元周期点を含むホモクリニック集合の residual な部分集合で,その要素を始点に持つ軌道はヒストリー的挙動を持つものがある.」最後の結果は,現在論文を作成中であり,2019年度中に投稿予定である.
|