研究課題/領域番号 |
26400097
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
小沢 誠 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (50308160)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多重分岐曲面 / 埋め込み / 種数 / 3次元多様体 / ヒーガード分解 / マイナー / 障害集合 |
研究実績の概要 |
本研究の申請時に多様体グラフと呼んでいた多重分岐曲面について、早稲田大学の松崎尚作氏と引き続き共同研究を行った。 先ず、多重分岐曲面が、ある向き付け可能閉3次元多様体に埋め込み可能であるための必要十分条件は、正則であることを示した。これにより、正則な多重分岐曲面全体からなる集合に対し、向き付け可能閉3次元多様体への埋め込みを介して、3次元多様体の不変量を多重分岐曲面の不変量に拡張することができる。この研究の方向性において、3次元多様体の最も基本的な不変量の一つであるヒーガード種数を多重分岐曲面へ導入した。 正則な多重分岐曲面を3次元多様体に埋め込む際、分岐周りの区域の円順列、及び、スロープが基本的な量となる。円順列とスロープを指定する毎に、多重分岐曲面の近傍が一つ定まり、その近傍から3次元多様体への埋め込み全てを考え、ヒーガード種数の最小値を多重分岐曲面の近傍の種数と定める。 本研究の主定理として、正則な多重分岐曲面の種数は、分岐数と区域数の和で上から評価されることを示した。この結果は、十分に大きい種数を持つ多重分岐曲面の分岐数と区域数は十分大きくなければならないということを示しており、自然かつ基本的な結果であると言える。一方、正則な多重分岐曲面の近傍に対して、埋め込み種数は、近傍の境界の種数の合計と、抽象的双対グラフの1次元ベッチ数の和で上から評価されることも示した。 多重分岐曲面の3次元多様体への埋め込みについて、1次元ホモロジー群が障害となるが、本研究では、多重分岐曲面の1次元ホモロジー群を効率的に求める方法を得た。更に、いくつかの例について、1次元ホモロジー群の表示を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多重分岐曲面は、グラフの2次元版であるとみなすこともできる。グラフ理論において、マイナーが定義されており、マイナーに関して閉じている性質に関する障害集合を決定することで、その性質を特徴付けることが主要な方法論である。そこで、多重分岐曲面にマイナーを定義し、マイナーに関して閉じている性質を調べることにした。先ず、3次元球面に埋め込み可能であるという性質がマイナーに関して閉じていることを示し、その障害集合のいくつかの要素を求めた。また、3次元球面への任意の埋め込みが結ばれた閉曲面を含む(または、絡んだ閉曲面を含む)とき、多重分岐曲面は内在的に結ばれている(または、絡んでいる)と定義した。内在的に結ばれた(または、内在的に絡んだ)グラフから、内在的に結ばれた(または、内在的に絡んだ)多重分岐曲面が自然に得られることを示し、グラフに対する障害集合が多重分岐曲面に対する障害集合に含まれることが分かった。 しかし、グラフに対する障害集合のように、例えば、ΔYで得られる系列が障害集合に含まれることなどの系統立てた法則が、まだ多重分岐曲面については分かっていない。この為、進捗状況をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下で述べる多重分岐曲面の埋め込みの種類及び特徴付けについて研究を進めていきたい。 これまでは、埋め込み可能であるという性質のみを扱ってきたが、この場合、圧縮可能な埋め込みも認めることとなる。圧縮可能な埋め込みは、圧縮不可能な埋め込みからチュービングで得られるので、より基本的な埋め込みは圧縮不可能な埋め込みであると言える。このことから、多重分岐曲面の本質的な埋め込みについて研究することは今後の課題の一つである。 また、多重分岐曲面の3次元多様体への埋め込みに対し、その外部の成分がハンドル体から成るものは、全ての埋め込みの中でも単純なものであるといえる。このような埋め込みは、補空間の基本群が自由群であるので、自由であるという。これは、ヒーガード分解の一般化にもなっている。即ち、多重分岐曲面によって、3次元多様体がハンドル体へと分解されている。二つ目の課題としては、多重分岐曲面の自由な埋め込みに関する研究がある。 最後に、別の研究方針として、埋め込みではなくはめ込みを考えることもできる。この方向性では、先ず、3次元球面にはめ込み可能であるという性質がマイナーに関して閉じていることを示したい。そして、はめ込みに関する障害集合を求めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費・宿泊費が予定より安く済んだ為。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、国際研究集会「International Workshop on Spatial Graphs 2016」を主催する為、研究者招聘の為の旅費や宿泊費に充てる。
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