研究実績の概要 |
昨年度までのKenneth Baker氏(University of Miami)との共同研究で、結び目のツイスト族がタイト接触構造をサポートする無限個のファイバー結び目を含むための必要十分条件を与えることができた。その応用として、結び目のツイスト族が無限個のL-空間結び目を含むための必要条件が得られ、結び目のねじり操作とL-空間結び目に関する研究の目標の一つが達成されたことになる。この結果をブレイド理論の視点からさらに深化、精密化することが今後の課題である。また、上記結果とHomの結果を合わせることにより、サテライトL-空間結び目がブレード状になっていることが証明され、Baker, Moore, Homによる予想を肯定的に解決することができた。サテライトL-空間結び目の特徴付けに関してはさらなる精密化を目指したい。サテライトL-空間結び目がブレード状になることから、サテライトL-空間結び目には本質的なConway球面が存在しないこともわかり、Lidman, Mooreの予想に対する部分的な解答も得られた。また、3次元多様体の基本群の共役ねじれ元の研究に端を発して、伊藤哲也氏(京都大学)、寺垣内政一氏(広島大学)と結び目のDehn手術で自明化される結び目群の元からなる正規部分群の研究を進め、これらの正規部分群の間の関係を明らかにすることができた。特に、全ての非自明な結び目の結び目群が周辺的Magnus性を持つことを示すことができた。この結果はDehn手術の代数的側面を記述する基本的な結果である。今後、当初の目的であった結び目の0-手術以外のDehn手術で得られた3次元多様体の基本群が共役ねじれ元をもつか、という問題の解決に向けた研究にも取り組んでいきたい。
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