研究課題/領域番号 |
26400101
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
福本 善洋 立命館大学, 理工学部, 教授 (90341073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲージ理論 / 平坦接続 / 有理ホモロジー球面 / 負定値同境 / チャーン・サイモンズ不変量 / 結び目 / 指標多様体 / 指数定理 |
研究実績の概要 |
2014年度は,1. 幾つかのレンズ空間から有理ホモロジー球面への負定値同境の研究,および2. Bounding genusの有理ホモロジー球面への拡張とそのNeumann-Siebenmann不変量による評価に関する研究を行った. 1. 幾つかのレンズ空間から有理ホモロジー球面への負定値同境 (1)古田幹雄氏との共同研究において,幾つかの端をもつ4次元多様体上のインスタントンの貼り合わせやコンパクト性の解析に関する詳しい考察を行った.そこでは、インスタントンのモジュライ空間の端に関するトポロジーの考察が本質的な役割を果たしている.特に,エネルギーが端に向かって逃げていった後に残る平坦接続の摂動に,P. Kronheimer-T. Mrowkaによるホロノミー摂動を改良し,負定値同境上の可約な平坦接続の存在証明にこれを応用した.(2)古田氏による,4次元球面上の巡回群の作用に関して同変なインスタントンの分類を用いることにより,エネルギーが(m,1)型のレンズ空間に向かって遠方に逃げる場合を考察した(1)の結果を,(a,b)型のレンズ空間の場合に拡張した.これにより,(a,b)型のレンズ空間を含む幾つかのレンズ空間から有理ホモロジー球面へのある負定値同境のなかに(a,-b)型のレンズ空間が存在し,同境上の可約平坦接続によってそれらが対をなしていることを示した. 2. 有理ホモロジー3球面のBounding genusとNeumann-Siebenmann不変量 松本幸夫氏の11/8予想において導入された整係数ホモロジー3球面のホモロジー同境不変量であるBounding genusを,2つの有理ホモロジー3球面に対するある種の距離として一般化し,w-不変量および,上正明氏によってSeifert有理ホモロジー球面に対してその等価性が証明されたNeumann-Siebenmann不変量による下からの評価を行った.さらに,Dehn-Kirby計算によって,枠付き絡み目を用いた4次元多様体の構成から,有理ホモロジー球面のbounding genusの,結び目の4球体種数による上からの評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. インスタントン・モジュライ空間の解析を用いた負定値同境の研究に関しては,従来の(m,1)型のレンズ空間の結果を(a,b)型のレンズ空間に一般化できたことは当初の計画通りであった.また,それと平行して,有理ホモロジー球面のbounding genusに関して,そのNeumann-Siebenmann不変量による下からの評価だけでなく,枠付き絡み目表示を用いた上からの評価が得られたことは新たな方向での成果であったといえる. 2. 一方において,モジュライの解析におけるホロノミー摂動をはじめとした技術的な問題において時間を掛けたこともあり,結び目の補空間の零跡SU(2)表現空間の解析に関して余り結果を得ることができていないという現状もある.
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は,1. 幾つかのレンズ空間から有理ホモロジー球面の負定値同境における前年度の結果を踏まえた研究,および2. P. Kirk氏とJ. Pinzon氏との2-タングルの補空間の零跡SU(2)表現空間に関する共同研究を踏まえた考察をすすめる.特に1. に関して,(1)インスタントンがL(a,b)型のレンズ空間に向かって逃げていく場合の結果を踏まえ,これにインスタントン・モジュライ空間の向きの情報もあわせて得られる帰結を考察する.また,(2)レンズ空間を3次元球面の有限群作用で割った一般の球面空間型の場合や,(3)有理ホモロジー球面をSeifert有理ホモロジー球面をはじめとした,一般の3次元多様体に置き換えた場合を考察する.また,2. に関して,(1)結び目を自明なタングルを含む球面によって内側と外側に分割し,それぞれのタングルの補空間の零跡SU(2)表現空間の,2次元球面から4点を除いた表現空間(枕袋)におけるLagrange交叉,並びにそれらのホロノミー摂動を計算機によって解析する.また,(2) 2本のタングルの補空間の基本群の零跡SU(2)表現空間におけるタングルに沿ったk重分岐被覆から誘導される部分表現の分類,(3)跡が零とは限らない定値のU(1)となる表現空間の解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
モジュライ空間の解析におけるホロノミー摂動をはじめとした技術的な問題の解決に集中的に取り組み,これに時間を要した.結果として,国際会議等への参加による情報収集および発表に掛ける時間を確保することができなかったことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
2014年度の研究によるモジュライ空間の解析における技術的な問題点は概ね解決に至り,したがってこれらの論文を公表することを急務とし,2015年度においては国際会議等において,これらの研究を発表することとする.
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