可換Cスター環とその上の自己同型による接合積として、具体的なL1関数の環としてのL1バナッハスター環と、そのヒルベルト空間上の表現論に対応するCスター完備化であるCスター接合積の関係を、主に既約表現の観点より調べる。まず(位相的)既約表現の構成のための一般的手続きを与える。具体的には、まず第一段階としてその可換Cスター環上のエルゴード状態(エルゴード確率測度)をとり、第二段階としてI型因子環との接合積上のエルゴード変換への拡張をとる。その結果接合積の既約表現が自然に構成される。問題は第二段階がどういう場合に可能かの特徴づけがないことである(また可能だとしても拡張の仕方は多様であるに違いないがその多様性についての情報もない)。離散的でないエルゴード状態の場合には一般に可能だと思われるが、そのことの証明には成功していない。しかし具体的な二例についてこのことを確かめた(ベルヌーイ変換と無理数回転と、そのうえの標準的なエルゴード状態、および有限I 型因子環)。これは特殊な結果とはいえ、従来考察の対象になっていないことと思われ、既約表現とエルゴード変換に対して何らかの知見・示唆を含み、興味深いと思われる。さらにCスター接合積の既約表現は代数的にも既約であるが、それをL1バナッハスター環に制限すれば、一般的には代数的には既約でないことを示す。(「一般には」と書いたが、このエルゴード確率測度に対する条件が満たされない例は見つかっていない。)これは富山淳氏との共同研究である。そのほかこれに関する事柄としてL1バナッハスター環のCスター環との相違についての研究を行う。
|