研究実績の概要 |
行列・作用素の不等式と平均に関する研究と量子情報への応用的研究を行い,所定の成果を得た. 量子ダイバージェンスと量子情報路のリバーシビリティについて以前から共同研究していたM. Mosonyi(ハンガリー)と,いくつかの異なるタイプの量子ダイバージェンスについて,量子情報路の単調性における等号条件からリバーシビリティが成立するかどうかという問題を系統的に研究した.論文は投稿中である. 2変数の行列のトレース・ノルム関数の凹凸性についての以前からの継続研究を行い,以前の結果を大幅に改良することができた.また,行列のマジョリゼーション理論において重要な荒木の対数マジョリゼーションと安藤-日合の対数マジョリゼーションを拡張する論文を発表した.さらに,M. Lin(中国)との共同研究により,行列のアダマール積と幾何平均の固有値・特異値に対して知られていた対数マジョリゼーション型の不等式について,幾何平均を重み付き幾何平均の場合に拡張することに成功した. Y. Lim(韓国) との最近の共同研究で,正定値行列の作るリーマン多様体上の確率測度に対するカルタン重心(多変数の幾何平均を一般化したもの)に対して,対数マジョリゼーションとリー-トロッター積公式を研究し目標の結果を得た.最初の共著論文は印刷中であり,現在続きの論文を作成中である. R. Konig(独), M. Tomamichel(オーストラリア)との共同研究により,行列の特異値に対する(対数)マジョリゼーションの概念を対数積分の平均を含む形に拡張して,以前の荒木-Lieb-ThirringによるGolden-Thompson型の対数マジョリゼーションとユニタリ不変ノルム不等式を多変数の行列の場合に拡張することに成功した.論文は印刷中である.
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