研究実績の概要 |
1. D_X-加群に対する混合問題の超局所解析の座標普遍な定式化:昨年立てた今後の研究方針に沿い,1991年に研究代表者が導入した層B_Y(O_X)を使って一般の連立解析的偏微分方程式系に対し混合問題の超局所解析理論を座標不変な形で一般化することに成功した.すなわち,微分方程式が定義される多様体と余次元1の解析的境界の複素化をX, Yとし,Yを非特性境界面とするX上の連接左D_X-加群Mと境界条件にあたる連接左 D_Y-加群Nに対し混合問題の三つ組(M,N,h)なる概念を定義し,境界条件を満たす解を制御する連接左D_X-加群M_hを構成した.混合問題の超局所解析とはB_Y(O_X)に値を持つ M_hの解の層複体のマイクロ台を上から評価することであり,それをMの特性多様体に対する条件と三つ組(M, N, h)に対するLopatinskii条件との組み合わせによって与えた.ただし最終的な混合問題に関する応用定理などにはB_Y(O_X)やM_hは現れない.また同時にB_Y(O_X)に現れるB_Y(.)をX上の層複体に作用する関手としても定義できることを示した.すなわちYを中心とするXの実モノイダル変換Z上の層複体の作る導来圏への関手として構成し,それが正則関数層の場合,従来の解析的な定義などと一致することを示した.
2. G. Lebeau の回折現象の解析的正則性に関する難解な理論を,代数解析的な手法による別証明につなげるための手掛かりとしてマイクロ関数の立場から見直し,その本質的な部分のより理解しやすい形の解説を与えた.
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