研究課題/領域番号 |
26400111
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
関口 次郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30117717)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自由因子 / 平坦構造 / パンルベ方程式 / 大久保型微分方程式 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度から継続して研究してきたテーマとB.Dubrovinの講義録およびC.Sabbahの著書にあるFrobenius manifoldとの関係を明確にさせた。そしてこれまでに得られた知見を論文にまとめた。これは琉球大学の加藤満生,眞野智行氏との共同研究である。一般のn次元空間の場合にflat coordinate,potential vector field, WDVV方程式の一般化などを議論した。知見のひとつは,既約な実鏡映群の場合に構成されていたflat coordinate systemを既約な複素鏡映群でwell-generatedという条件のつく枠組みに拡張したことである。実鏡映群の場合は35年以上前に研究代表者と斎藤恭司,矢野環氏とで構成しており,それはFrobenius manifoldの最初の例になった。その後、複素鏡映群へ拡張する試みはいくつかあったがいずれも不成功に終わっていた。今回の成果はそれに成功したことになる。この際,Frobenius manifoldの中心的役割をするpotentialをpotential vector fieldに書き換えたことが新しいアイデアである。もうひとつの知見はPainleve VI方程式についてである。Dubrovinは3次元の場合にWDVV方程式と1つの特別な媒介変数をもつPainleve VI方程式が本質的に等価であることを示していた。Painlve VI方程式は4つの媒介変数をもつ。WDVV方程式を拡張して完全なPainleve VI方程式と等価な枠組みを構成した。これから,Painleve VI方程式にpotential vector field, flat coordinateがあることを示せたことになる。これはこれまでになかった新しい成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平坦構造は30年以上前に斎藤恭司,矢野環氏と本研究代表者によって実鏡映群に対して定式化された。その後,1990年代にB.Dubrovinが平坦構造と物理学由来のWDVV方程式を統合させてFrobenius manifoldという概念を定式化させた。Dubrovinはさらに3次元Frobenius manifoldをPainleve VI方程式の研究に応用した。Painleve VI方程式は4個の媒介変数をもつが,その中の特別な1個の媒介変数をもつものとFrobenius manifoldと対応させた。さらにDubrovin-MazzoccoはPainleve VI方程式の代数函数解との関係を調べた。研究代表者は長年の自由因子の研究を発展させ,連携研究者である琉球大学の加藤満生,眞野智行氏との共同研究において,Frobenius manifoldの概念を拡張させることに成功した。その応用として,実鏡映群の場合の平坦構造を複素構造群の場合に拡張した。また拡張されたFrobenius manifoldと4個の媒介変数をもつPainleve VI方程式との対応を与えることができた。これらはDubrovinの結果の拡張であり,Frobenius manifoldの研究における大きな前進になっている。
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今後の研究の推進方策 |
WDVV方程式の解をpotentialという。同じように,拡張されたWDVV方程式の解をPotential vector fieldという。Painleve VI方程式の代数函数解の分類は確立している。したがってPainleve VI方程式と拡張されたWDVV方程式との対応によって,これらの代数函数解に対応するpotential vector fieldを求めることは興味ある問題である。この問題をひとつのテーマとする。高次元の場合,拡張されたWDVV方程式から得られる非線形微分方程式はPainleve VI方程式の類似になる。これらの類似物を求めることを第2のテーマとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国人研究者を日本に招待し研究集会を開催する計画が他の研究者が提案していた。そのときに本研究の連携研究者の研究集会参加費用等を本研究の予算から支出する予定でいた。しかし、外国人研究者は来日を平成28年度に延期するとの連絡があった。そのため予算残額を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由に記述したように、連携研究者の出張旅費として使用する予定。
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