平成29年度は、対称空間上の平均値作用素について研究を行った。一般に、対称空間上で群作用で不変な微分方程式の大域解を構成する様々な局面で平均値作用素が現れ、重要な役割を果たす。そこで、シュレディンガー方程式の基本解を平均値作用素を用いて調べるということを念頭に置いて、平均値作用素について必要とされる重要な性質である全射性、及び、核の構造について研究を行った。そして、幾つかの点で肯定的な結果を得た。結果の一部は、Christensen氏、Gonzalez氏との共著の論文としてJournal of Functional Analysis から出版された。更に関連する反応拡散系の微分方程式を扱い、これについても、結果を、大下承民氏との共著の論文として、Mathematical Journal of Okayama University から出版した。 研究期間全体を通した成果について。対称空間上のシュレディンガー方程式の基本解については、スペクトル理論との関連、表現論との関連、対称空間上の調和解析との関連、数論(特に一般化されたガウス和)との関連など、様々な視点から研究を行い、ある一定レベルの成果を得ることが出来た。また、当初の研究計画にあるように磁場を持つシュレディンガー方程式の基本解の特異性の構造についても研究を行った。それらの成果の全てではないが、一部分は論文として既に発表してある。今後は得られた結果を順次、論文にまとめると同時に、磁場を持つシュレディンガー方程式の解の位相的な性質の解明や対称空間上の非線形タルボット効果の解明などに注力するつもりである。
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