研究課題
平成29年度は本研究課題の最終年度にあたり,非可換調和振動子の模型の一つである(一般化された)量子Rabi模型の持つ量子相転移の可能性を探り,本研究課題の締めくくりとなる結果と次の研究テーマへと繋げる内容について考察した。超伝導回路のバイアス・エネルギーがゼロの場合,結合定数がゼロのとき量子Rabi模型はN=2超対称量子力学の数理模型となっているが,結合定数を大きくした極限では元の超対称性が自発的に破れる数理模型となっているという結果をH28年度までに得たが,これを平成29年度にハミルトニアンのノルム・レゾルベント収束として証明し直し,この極限ハミルトニアンが有効ハミルトニアンとして深強結合領域の量子Rabiハミルトニアンの解析に有効であることを示した。ここで証明した定理は,バイアス・エネルギーが無い(従ってパリティ対称性を持つ)場合に,裸の状態としての基底状態に対するものである。さらに平成29年度は,バイアス・エネルギーが有る一般化された量子Rabi模型に対し,一般の固有状態を考察した。バイアス・エネルギーが無い場合,結合定数が大きいとき,量子Rabi模型の基底状態から原子の影響が消えコヒーレント状態によるシュレディンガーの猫状態となるが,一方,バイアス・エネルギーが有りパリティ対称性が壊れると,その状態も壊れることが分かった。そこで,原子・光子間結合が大きくなったときに重要となる光子の場の2次の項をも考慮し,原子核物理学の(メゾン・)ペア理論に従い,物理的状態としての基底状態を取り出すくり込みを施し,ハミルトニアンの強結合極限をノルム・レゾルベント収束として考えた。この極限ハミルトニアンでは,くり込みが原子の影響を残し,この影響が基底状態をシュレディンガーの猫状態にする可能性が見出された。
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Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical
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EMS Series of Congress Reports, Functional Analysis and Operator Theory for Quantum Physics
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