研究実績の概要 |
超幾何関数など多くの特殊関数は微分方程式や差分方程式と深く関連している。ホインの微分方程式のq差分化としてqホイン方程式が知られているが、今年度はqホイン方程式についての研究などが進展した。 qホイン方程式はHahnにより1971年の論文で導入されたがしばらくは注目されず、報告者は本研究課題の遂行中に出版した論文「Degenerations of Ruijsenaars-van Diejen operator and q-Painleve equations」において再発見した。この論文ではqホイン方程式が2通りの方法で導出されたが、その1つはRuijsenaars-van Diejen 作用素から4回の退化によって導出するものである。 今年度に出版された論文「On q-deformations of Heun equation」では、この退化において2回退化のものと3回退化のものについて、確定特異点や見かけの特異点の理論を差分化したものからの特徴付けを行った。4回退化のqホイン方程式においては、q→1の極限で4点{0,1,t,∞}に確定特異点をもつフックス型微分方程式、すなわち標準形でのホインの微分方程式が得られるが、3回退化においてはq→1の極限で無限遠点が特異点でない4点{0,t_1,t_2,t_3}に確定特異点をもつフックス型微分方程式が現れること、および2回退化においてはq→1の極限で原点および無限遠点が特異点でない4点{t_1,t_2,t_3,t_4}に確定特異点をもつフックス型微分方程式が現れることがわかった。q差分方程式においては微分方程式の場合とは違って原点および無限遠点が特別な特異点となると考えられ、このことが退化の構造と整合的であることがわかった。 本課題の研究において得られた結果をまとめた他の論文についても出版にこぎつけることができた。
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