研究課題/領域番号 |
26400126
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
青木 貴史 近畿大学, 理工学部, 教授 (80159285)
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研究分担者 |
中村 弥生 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60388494)
鈴木 貴雄 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60527208)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超幾何微分方程式 / 超幾何関数 / WKB解 / Stokes曲線 / 漸近展開 / Stokes現象 / Borel総和法 / 無限階微分作用素 |
研究実績の概要 |
平成27年度に引き続き大きなパラメータを持つ超幾何微分方程式の完全WKB解析を中心に研究を行った。27年度までの研究で残された部分のうち、大きなパラメータを超幾何微分方程式の固有パラメータに一般の1次式で導入した場合の解析について従来の結果を拡張する結果が得られた。特に、従来は確定特異点において超幾何微分方程式の正則解が劣勢なWKB解と対応する場合のみを対象としていたが、劣勢WKB解が特異点において正則でない解と対応する場合についての解析方法について有効なアイデアが得られた。その結果、Stokes幾何が退化しないすべての場合について超幾何函数とWKB解の対応を得る方法について確かな見通しが得られた。更に、これらの結果を超幾何関数が多項式に退化した場合として定義されるJacobi多項式の次数に関する漸近挙動に応用し、既存の結果が再現できることが分かった。非線型最急降下方で得られている既存の結果ではパラメータがすべて実数であることを仮定しているが、本研究の方法である完全WKB解析を用いると、一般の複素数に対しても同様の結果が得られることが分かった。このことは我々の方法が優れていることの証であると考えている。また、無限階微分作用素に関しては、指数増大度を持つ整関数の空間に作用するクラスを見つけることができた。これによりsuper oscillationに関連したシュレディンガー方程式の初期値問題の解析に応用可能な道具立てが一つ得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の課題として設定したものについては概ね解決または解決の見通しやアイデアが得られた。加えて無限階微分作用素に関しては当初は想定していなかった方向に問題が広がり、物理学への応用等の新たな知見が得られた。このように研究自体は順調に進んでいると考えているが、研究成果を論文としてまとめる部分に関しては若干の遅れを感じている。基本的なアイデアと計算の枠組みは得られているが、完全に計算を遂行し細部を詰める段階で想定以上の時間を要している。一方で、研究課題は当初の予想以上に広がりを見せており、物理学者から注目を集めるなど、研究開始当初は思っていなかった影響を与えつつあると実感している。今後のさらなる進展に期待できる状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究の最終年度であるため、これまでに得られた研究成果を論文としてまとめることに重点を置きたい。そのために昨年度得られた着想を実行して劣勢WKB解がべき関数の分岐を持つ超幾何微分方程式の解になっている場合の対応関係の解析を完成させ、超幾何関数とWKB解のボレル和の完全な対応関係を公式の形で書き下すことを目指す。これにより超幾何関数のパラメータに関する漸近展開の公式が極めて一般的な形で得られる予定である。これらの結果を具体的に公式の形で書き下すためには、べき関数や対数関数の分枝をどのように選択するかを決定する必要がある。これは与えられたパラメータに依存して多様に変化するため、統一的に書き下すためには様々な困難が予想される。様々な場合について数値実験を行い、この困難を克服したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月、3月に開かれた複数の研究集会、ワークショップに科研費旅費により参加して情報収集・研究交流を行う予定であったが、学内の管理運営業務と日程が重なり参加できなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
参加予定の研究集会等が学内管理運営業務等と重なった場合には、研究分担者・連携研究者および研究協力者に参加を依頼し、情報収集および研究連絡に務めて頂く計画である。
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