研究課題/領域番号 |
26400127
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山根 英司 関西学院大学, 理工学部, 教授 (80286145)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 可積分系 / 漸近挙動 |
研究実績の概要 |
非線型微分差分方程式, 特に Ablowitz-Ladik が導入したdefocusing な可積分離散非線型シュレーディンガー方程式について,|n|<2t の場合の解の漸近挙動は前から分かっていた. 逆散乱法と非線型鞍点法を用いて,マイナス2分の1乗の減少に振動を掛け合わせた形の項が2つ現れることが分かっていた. 今年度の研究では,それ以外の領域での漸近挙動を調べた. |n|=2t の付近ではマイナス3分の1乗の減衰と振動の合わさった挙動をする.項はひとつだけである.その係数はパンルヴェ関数で書けることが Jimbo-Miwa-Ueno らの結果から分かる. |n|> 2t ではnの任意の負べきよりも速く減少することが分かった. focusing な場合の挙動について,大体の様子が分かってきた. すなわち,有限個のソリトンの和が主要項であり,小さい摂動が加わる.ソリトンがないこともありうるが,その場合はdefocusing な場合とよく似た結果になると思われる. ただし,結果は大して変わらないのに,証明には本質的な困難が新たに現れる. それを乗り越えることが今年度の最大の課題であったが,Deift-Park の論文の中にある議論を適当に読み替えることで,我々に必要な形の命題が得られるようになった.すなわち,反射係数が大きい場合でもさまざまなレゾンルベントの存在が証明できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
defocusing な場合については既に十分詳しい結果を得て論文が出版されている. focusing な場合については,まだ発表したものはないものの,どういう条件を課せばどういう結果がどういう方法で証明できるかある程度のめどが立ってきた. すなわち,ソリトンの和プラス小さい誤差項の形であり, ソリトンが無い場合は focusing な場合とたいした違いが無いことが分かってきた. KdV 方程式に関する Tecshl の論文の手法を応用することで,ソリトンが扱える. ソリトンが無い場合については,Deift-Park の論文の手法を他の場合まで拡張することにより,良い評価が得られることが分かってきた. また,Darboux 変換の理論もうまく作れそうである.
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今後の研究の推進方策 |
focusing な場合について,既に大まかに考えている方針があり,今後はそれをきちんとした証明にまとめる.すなわち,ソリトンがある場合については KdV 方程式に関する Tecshl の論文の手法を我々の問題に適用できる. ソリトンが無い場合については,Deift-Park の論文の手法をアレンジして適当なレゾルベントの存在を示すことができる. また, 非線型シュレーディンガー方程式を始めとして,さまざまな可積分系に関する既存の結果を参考にしてDarboux 変換の理論を作る.
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次年度使用額が生じた理由 |
10,709円は旅費としても図書を購入するにも不十分な額なので次年度にまわすことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
マカオで開かれる研究集会に参加するための旅費として用いる.
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