研究課題
離散可積分非線形シュレーディンガー方程式の逆散乱法はかなり前から知られているが,まだ十分な理論は出来ていない.すなわち,ポテンシャルと散乱データとの間に全単射があることの証明はまだ得られていない.今のところは,ポテンシャルから散乱データへの写像Sと散乱データからポテンシャルへの写像Tについて,その合成TS が恒等写像だということだけである.ST も恒等写像であることを示したいのであるが,まだ出来ていない.離散でない連続な可積分非線形シュレーディンガー方程式については十分な理論が出来ているが,それを真似しようとしてもなかなかうまく行かないのである.このことを何とかするために,連続な場合の理論を参考にして研究を進めた.Zhouによるindex theory を真似て,離散の場合の対応物を作った.特に,散乱データを形式的に与えた場合にリーマン・ヒルベルト問題を定式化し,その解が一意に存在することを証明した.証明に使う主な道具はフレドホルム作用素の理論である.さらに,副産物として,ある種の行列がいい形の因数分解を持つことも示すことが出来た.報告者の定理によって分かったのは,離散可積分非線形シュレーディンガー方程式に関してAblowitzらが与えたリーマン・ヒルベルト問題は対称性が必要以上に高いということである.そこまでの対称性がなくてもリーマン・ヒルベルト問題の一意可解性は成り立つ.このことは,彼らの逆散乱法が必ずしもいいものでないことを示しているのかも知れない.実際,ラックス対の選び方は他にもあってそれに応じた逆散乱法がある.
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Formal and Analytic Solutions of Diff. Equations, Formal and Analytic Solutions of Diff. Equations, Springer Proceedings in Mathematics & Statistics
巻: 256 ページ: 95-102
10.1007/978-3-319-99148-1_6