研究課題/領域番号 |
26400130
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河邊 淳 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50186136)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非加法的測度 / 非線形積分 / 摂動法 / 測度の弱収束 / 積分の収束定理 / Choquet積分 / Sugeno積分 / Shilkret積分 |
研究実績の概要 |
今年度は,Choquet積分,Sugeno積分,Shilkret積分などの非線形積分を,非加法的測度μと被積分関数fを変数にもつ非線形汎関数ととらえ,その摂動(μとfの微少な変化に応じた汎関数値の微少な変化)を制御する摂動法の開発と応用に焦点を当て研究を進め,次の結果を得た. 1.非加法的測度の弱収束に対するPortmanteau型定理の非線形積分を用いた定式化:中心極限定理や大偏差原理などの確率論や数理統計学における極限定理の定式化や証明に利用される測度の弱収束性,すなわち,それら測度によるLebesgue積分が定める有界連続関数空間上の積分汎関数の各点収束性は,連続集合上での測度の各点収束概念であるLevy収束性と同値である.この結果を関連するその他の同値条件と一緒にまとめて定式化したのが,位相空間上の測度論で広く知られているPortmanteau定理である.この研究では,連続集合を強正則集合に,Lebesgue積分を初等性と摂動性をもつ非線形積分汎関数に置き換えることにより,Portmanteau定理を非加法的測度論の枠組みで定式化した.重要な応用として,初等的かつ摂動的な非線形積分であるChoquet積分,Sugeno積分,Shilkret積分が定める測度の弱収束は,すべてLevy収束と一致することがわかった. 2.同程度一様自己連続な非加法的測度の集合上での測度の弱収束の一様性:測度の弱収束が定める位相構造の研究では,その距離付け可能性問題が一つの重要なトピックである.この研究では,距離空間上の同程度一様自己連続な非加法的測度全体からなる集合上では,生成的かつ摂動的な非線形積分が定める測度の弱収束は,Lipschitz関数からなる有界集合上で一様であることを示し,測度の弱位相がFortet-Mourier型の距離で距離付け可能となることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.研究計画「非加法的測度の弱収束に関するPortmanteau型定理の一般非線形積分を用いた定式化」と「同程度一様自己連続な非加法的測度の集合上での測度の弱収束の一様性」については,論文「Weak convergence of nonadditive measures based on nonlinear integral functionals」が国際専門誌Fuzzy Sets and Systemsに掲載された. 2.研究計画「非線形積分に対するRiesz型及びDaniell型積分表示定理」に関連する研究として,論文「The structural characteristics of Choquet functionals」が国際専門誌Journal of Nonlinear and Convex Analysisに掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画・方法に基づき研究を推進する.また,比較的順調に研究が進んでいることから,下記の課題についても追加で研究を行う. 1.優関数の存在を仮定しない場合の積分収束定理として重要なVitaliの収束定理が,Choquet積分,Sugeno積分,Shilkret積分に対して定式化可能かどうかを調べ,可能な場合には,それらを統一的に議論する手法を考案する. 2.位相空間上の下半連続(上半連続)関数の単調増加(単調減少)有向列に対する収束定理を,摂動性をもつ非線形積分に対して定式化する. 3.正規空間上の有界な連続関数全体を定義域空間とするChoquet汎関数に対して,汎関数が下から連続ならば完全o-連続な表現測度が,上から連続ならば完全c-連続な表現測度が選べることは知られている.しかし,上からかつ下から連続な場合に,完全o-連続性と完全c-連続性を同時に満たす表現測度が選べるか否かは,まだ未解決の問題である.そこで,従来とは異なる表現測度の構成手法を考案し,この未解決問題を肯定的に解決する方策を探る.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,海外出張を本年度実施予定であったが,研究成果を発表するのに適した国際会議が次年度に数多く予定されていることから,成果発表のための海外出張旅費として確保していた予算の一部を,次年度に繰り越すこととした.そのため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も国内外で開催される研究集会に積極的に参加し,本研究課題に関連した研究発表,研究打ち合わせ,情報収集のための旅費として,平成28年度請求額とあわせて使用予定である.また,本研究課題と密接に関連する研究を行っている国内外の研究者との研究交流(主に呼び寄せ)のための旅費としても使用する予定である.
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