研究課題/領域番号 |
26400132
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上木 直昌 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (80211069)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 確率解析 / 微分方程式 / 作用素論 / 数理物理 / ランダムシュレディンガー作用素 / スペクトル / Wegner 型評価 / 磁場 |
研究実績の概要 |
本研究はランダムなシュレディンガー作用素に関する様々な問題に確率論的立場から取り組むことを目的としている。本年度は特に Gauss 型確率場を磁場にもつシュレディンガー作用素に対する Wegner 型評価について前年度迄に得られていたスピン0の場合における結果をスピン1/2の場合に拡張することに取り組み、得られた結果を1月10日に京都大学大学院人間・環境学研究科で開かれた研究会で発表した。スピン1/2の場合はディラック作用素を扱う方法とパウリハミルトニアンを扱う方法の2種類の方法が考えられ、ディラック作用素を扱う方法は境界条件を与えることが難しくパウリハミルトニアンを扱う方法にはスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルが従属していることによる難点が現れる。本研究ではまずディラック作用素を扱うことを選びランダムポテンシャルだけを有限領域に制限した形での Wegner 型評価を得ることに取り組んだ。現状ではベクトルポテンシャルを与えて Wegner 型評価を得ることは出来て、その時のベクトルポテンシャルの条件はスピン0の場合の磁場の条件よりも弱いもので済んだが、スピン0の場合には磁場だけに条件をおいて結果が得られていたのに対しスピン1/2の場合は磁場だけに条件をおいた設定ではまだ結果は得られていない。しかし一般に磁場にもつシュレディンガー作用素のスペクトル構造は磁場だけに依りベクトルポテンシャルの取り方には依らないので Wegner 型評価も磁場だけに条件をおいた設定で得られるべきである。この方面の研究を今後進展させたい。他方ベクトルポテンシャルの条件が弱いもので済んだ理由は固有値のランダムネスに関する勾配のノルムが真に正であることが弱い仮定で示せたことにより、このことがディラック作用素を扱う方法の有利な点になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランダムな磁場をもつシュレディンガー作用素に対する Wegner 型評価に関して理解が深まりスピン1/2の場合についてベクトルポテンシャルに仮定をおいた設定では相当一般的な状況で一定の結果を得て京都大学大学院人間・環境学研究科での研究会で発表することが出来たから。
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今後の研究の推進方策 |
ランダムな磁場をもつシュレディンガー作用素に対する Wegner 型評価に関してスピン1/2の場合の結果を磁場だけに条件を置いた設定に拡張したい。またパウリハミルトニアンを扱う方法によって進展が図れるかどうかを考察したい。この問題は更には一般のスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルが独立でないシュレディンガー作用素の問題につながる。
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