研究実績の概要 |
Sをd次元ユークリッド空間、gをSで定義されたガウス核、P, QをS上のボレル確率測度とする。[0,t]時間区間で、拡散行列を固定した連続セミマルチンゲールの全体のクラスを考え、その初期終期確率測度P,Q に対する確率最適輸送問題V(t,P,Q)について考える。ここで、コスト関数は2次関数とする。特に、V(t,P,Q)は、連続セミマルチンゲールの確率分布のドリフトが0であるマルコフ過程の確率分布に対する相対エントロピーで初期終期確率測度P,Qを持つもの全体についての最小値である。V(t,P,Q)の満たすMaster方程式は、形式的には、LionsやBensoussanらの結果から導かれる。彼らの研究では、其々、別の意味での微分可能性を仮定しているが、V(t,P,Q)は劣微分可能ではあるが微分可能ではない事が証明された。特に、LionsやBensoussanらの仕事が適応できない事がわかった。そこで、新たに、弱い意味での微分の定義を与え、V(t,P,Q)の優微分可能性については、証明できた。V(t,P,Q)の劣微分可能性については、特別な場合に、双対定理より証明できた。また、これらの研究の応用として、Witzenhausen型の問題やモーメント測度の構成の問題がある事がわかった。さらには、これらの研究に相互情報量が関係することも明らかになった。さらに、新たなアプローチの可能性として、2次モーメントを持つS上のボレル確率測度全体からなる測度距離空間上の確率最適輸送問題を考えることが上記の問題に有効に働くのではないかということもわかってきた。実際、このようなアプローチにより、問題の解析が線型化されるという利点があるが、その反面、2次モーメントを持つS上のボレル確率測度全体からなる測度距離空間の構造を調べる必要が出てきており、今後の研究課題となる。
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