研究課題/領域番号 |
26400144
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松本 裕行 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00190538)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 到達時刻 / ブラウン運動 / ベッセル過程 / コルモゴロフ作用素 |
研究実績の概要 |
ベッセル過程の到達時刻の確率分布に関する研究を発展させて,定数ドリフトをもつブラウン運動の球面への到達時刻の確率分布に関して研究を進めた.まず,問題が標準ブラウン運動の球面への到達時刻と位置の同時分布を知ることと同値であることに注意し,後者のラプラス変換をブラウン運動の極座標表示と球面上のブラウン運動の確率微分方程式を用いた解析により与えた.このことから,確率分布の密度関数をベッセル過程の確率分布を用いて表現すること,尾確率の漸近挙動を与えることに成功した.確率分布の表現は過去に知られていたものとは異なり,この表現から尾確率の研究を進めることができた.この成果は,論文として出版が確約されている. 定数ドリフトの柱状近傍の体積の期待値に関する研究を,球面への到達時刻の確率分布に関する結果の応用として行い,その漸近挙動を具体的な定数を用いて与えた.結果は全く知られていなかったもので,この結果も論文としての出版が決まっている. 確率解析の課題の一つである準楕円性をもつ微分作用素の典型的な例であるコルモゴロフの微分作用素に対応する熱核の研究を行った.この作用そのような退化している場合には古典力学との対応を付けることができていなかったが,池田信行氏との共同研究により対応を付けることに成功した.具体的には,退化を消すような摂動を加えた作用素に対する熱核を古典力学との対応で与え,摂動をゼロにした極限としてコロモゴロフ作用素に対応する熱核をとらえることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベッセル過程およびブラウン運動の到達時刻の研究は順調に進んでいると考えている.球面上のブラウン運動を確率微分方程式の解として表現することが定数ドリフトをもつブラウン運動を考察する際に,当初の予想より役に立ったことにより予定外の速度で研究を進めることができた. ただ,この研究に時間を取られたことと当初は予定になかったコルモゴロフ作用素の研究が進んだことから,正定置行列の空間上のラプラシアンに関する研究を進めることができていない点が自分としては残念であるが,次年度の重点課題として取り組みたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
ベッセル過程およびブラウン運動の到達時刻の研究については一定の成果を得たと考えている.今後は,研究集会において発表を重ねて討論を行い,今後の研究の方向を探る予定である. 正定置行列の空間上のラプラシアンに関しては,低次元の場合に具体的な計算を重ねて熱核の研究,対応する拡散過程の長時間漸近挙動の研究を進めたい. 確率解析に関する英語による書籍を準備中である.本研究の一部も含まれており,今年度中の出版を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
中途半端な額が残り,とくに必要とする消耗品もなかったため,次年度に有効活用するため繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
備品費に繰り入れて使用する予定である.
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