ベッセル過程,定数ドリフト付きブラウン運動の到達時刻の確率分布に関して,出発点が到達点より遠方の,無限遠を境界として考える場合について,濱名裕治氏(熊本大)との共同研究を前年までに引き続いて研究を進めた.ドリフト付きブラウン運動に関しては論文を発表した.ベッセル過程については,応用上重要な尾確率の漸近挙動について,以前示した主要項の決定に引き続き,第2項の決定まで行った.今年中には,論文として発表の予定である.また,学会や研究集会において結果は発表済みである. 到達時刻の分布に関しては,オルンシュタイン-ウーレンベックの確率過程に関しても研究を進めている.出発点が到達点より遠方の場合に,尾確率の指数減少が証明できて定数も求まると考えている. Cambridge University Press より,「Stochastic Analysis(確率解析)」という題目の専門書を谷口説男氏(九州大)と共著で出版した.伊藤解析と呼ばれる確率積分,確率微分方程式に関しては,可能な限りの例を挙げてわかりやすく解説した.マリアバン解析と呼ばれる経路空間上の解析に関しては,創始者マリアバン教授の考えに根付いた議論を行ったと考えている.さらに,これらの確率解析の理論の微分作用素の解析への応用を与えた.従来知られた専門書と趣を異にする部分のあるものができたと自負し ている. ただ,上記の仕事に時間をとられ,研究課題に挙げた対称行列のなす空間上の確率解析に関しては進展が見られていないのは残念であった.理解は進んでいるので,今後鋭意努力するつもりである.
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