研究実績の概要 |
本研究の目的は,複数の相を分離する境界面,いわゆる界面の確率モデルに関連したいくつかの長距離相関を持つ確率場を取り上げ,その漸近挙動に関する研究を通して相分離界面に関する物理現象の数学的な解析を目指すことであったが,対象とするモデルのひとつにΔφ界面モデルが挙げられる.このモデル物理的には系のエネルギーが雑にいって界面の曲率から定まり,細胞膜のモデルに対応することが知られている. いま, Δφ界面モデルにおいて場を高さ0のレベルに引き付けるピンニング効果を加えた場合の挙動について考える.1次元の場合はCaravenna-Deuschel(2008)によってピンニングの強さに応じて局在/非局在が変わる相転移が起こることが証明され,4次元以上ではピンニングの強さに関わらず場が常に局在化することを以前(2012)に研究代表者坂川が証明していたが,2, 3次元の場合は未解決であった.2016年度はこの問題に取り組み, Δφ界面モデルにおいてピンニング効果を加えた場合は2次元以上ではピンニングの強さに関わらず常に場が局在化することを対応する自由エネルギーが常に正となるということを示すことで証明できた.また,ピンニング効果と同時に場を正の方に押しやる反発的なポテンシャルを加えた場合についても考え,この場合は5次元以上では常にピンニング効果が勝って場が局在化すること証明した.これらの結果は論文にまとめ現在投稿中である.
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