研究課題/領域番号 |
26400148
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
南 就将 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 教授 (10183964)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ランダム作用素 / スペクトル統計 |
研究実績の概要 |
平成27年度に引き続き、1次元のシュレーディンガー作用素で、空間的に減衰する因子を持つホワイトノイズをポテンシャル項とするものを考察した。平成28年度中に明らかにできたのは次の3点である。(a)減衰因子が2乗可積分な関数であるときは、対応するシュレーディンガー作用素Hは下に有界である。(Hの確率1での自己共役性およびスペクトルの正の部分の絶対連続性は平成27年度に示されていた。)(b)減衰因子a(x)が空間変数xの関数として単調減少かつ連続的微分可能であれば、a(x)が2乗可積分でなくても、対応するシュレーディンガー作用素Hは確率1で自己共役となる。さらに減衰因子a(x)から決まる非負または無限大の数cが存在して、シュレーディンガー作用素Hのスペクトルは区間[0,c)において、確率1で、稠密に分布する固有値のみから成る。また、対応する固有関数の減衰に対する評価も得られた。この結果の証明はHに対する固有値方程式に付随するランダムな力学系に対して、乗法的エルゴード定理に類似する定理を示すことと、Gilbert-Pearsonによるスペクトルの性質の判定条件のランダム化を行うことによりなされる。cが無限大ならばHのスペクトルの正の部分が完全に決定されることになる。cが有限のときもcを超えるスペクトルパラメータに対する一般化固有関数の減衰度をある程度評価することができ、それによって一般化固有関数が2乗可積分にはならず、Hのスペクトルのcより上の部分が特異連続であることが示唆されるが、完全な証明には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」欄の(b)項に述べた数cが有限のとき、Hのスペクトルのcより上の部分が特異連続であることを証明できたと信じたが、その後論証にギャップがあることが判明し、それを修復することができなかった。この行き詰まりのために予定していた研究の他の部分への取り組みが遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
1、「現在までの進捗状況」欄に述べた行き詰まりを打開するために、ホワイトノイズのような特異なポテンシャルを持つシュレーディンガー作用素の取り扱いに、近年進展しているラフ・パス理論を適用する可能性について検討する。 2、2016年度に取り組む予定でいながら遅れている3つの課題、すなわち一般化Sturm-Liouville作用素の基礎理論の整備、減衰するホワイトノイズをポテンシャルとするシュレーディンガー作用素のスペクトルの負の部分の決定、および風疹流行の数理モデルの解析の完了、に引き続き取り組む。 3、2に基づいて、βアンサンブルの連続極限の問題に取り組む。
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