研究実績の概要 |
足し算の繰り上がりがなす有限マルコフ連鎖carries processについて研究を行った。特に推移確率行列の固有値、固有ベクトルを明示公式を得ることが出来た。また、このマルコフ連鎖がリッフルシャッフルとよばれる一般化置換群の上のランダムウォークにおけるdescentと呼ばれるものの推移とまったく同じものであることを明らかにした。この事実の証明にはこの2つの異なる確率過程の間にある種の明示的な全単射を構成することによってなされた。研究成果はAdvances in Applied Mathematics, Discrete Mathematicsといった学術誌に論文として掲載された。またFPSAC2014においてポスター発表を行っている。これらの論文はP.Diaconis氏をはじめとした海外の著名な研究者からも論文中で引用されている。 また一般化置換群上のリッフルシャッフルについては、シャッフル後の確率分布を明示的に与える式を得ることが出来た。これにより収束時間(混合時間)の見積もりが可能となった。研究期間の後半ではより広いクラスのマルコフ連鎖について研究を行った。これは左正則帯と呼ばれる有限半群のランダムな作用としてマルコフ連鎖を定式化出来る場合に、そのスペクトルや定常分布、収束時間などを計算する一般的な理論が知られており、これらの理論を用いて繰り上がり過程を含む様々なマルコフ連鎖を定式化する試みを行ったが、今のところ成果は得られていない。
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