当研究課題の研究の遂行については,p進整数環上の擬似乱数の理論,および確率論的容量,さらにはそれらに関係した形での,オーリッチ空間を始めとする関数空間の適用もできた。さらには,外部のデータ解析の研究者による講演の機会に接したことなどにより,知識の拡充を行い,修士課程の学生の指導内容に統計的推論に関係する内容を反映させできたことも含めれば,当初の計画はこれまでに完遂できたと考えている。よって,最終年度においては,非線形容量を到達するノルム値をもつ関数が存在することが知られているが,その関数のとる値の性質が,線形容量の場合と異なる性質を持つものとして捉えられる場合があることを研究し,その結果を講演として発表した。さらに,本来の研究課題の関連範囲である研究対象として,リーマン面の理論の中で重要な役割をもつ,リーマン・ロッホの定理の有限グラフへの拡張が比較的最近なされていることを注目点とした。既存の研究では,必ずしも確率論との関係をもつとは限らない幾何学的オイラー数を定理に反映した形のものにとどまっているが,その既存の理論より広い適用範囲の確立を目標とした研究テーマへの切り替えを,円滑に行える段階に入りつつある。実際,過年度に講演者として招いた研究者の幾何学に関連する考察を,上述のようにさらに次の段階に研究テーマを進化させるために,反映することができつつある。具体的には,グラフにおけるマルコフ過程の境界における反射を表す項の採用などが,それに該当する。また,一般化逆行列についての知識拡充が,ネットワークを電気回路と見立て,電圧に関する性質を電流に関する性質に変換して議論するために必要であったため,関連書籍を購入した。トロピカル幾何学に関連させる得る進化形もあるので,関連書籍を購入した。これまでの研究メモ等を,今後もファイルに残して使用するため,データ保管機器も必要となった。
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