研究課題/領域番号 |
26400152
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小川 重義 立命館大学, 理工学部, 教授 (80101137)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非因果的確率解析 / Ogawa Integral / 非因果的確率微積分方程式 / ブラウン粒子方程式 / 確率フーリエ変換 / 非因果的確率システム |
研究実績の概要 |
平成26年度は確率フーリエ変換(SFT)の基本的性質の解明、とくに逆変換可能性と逆変換公式或いは逆変換手順の構成他を主たる研究課題とした。確率フーリエ変換はフレドホルム型確率積分方程式の研究に際して研究代表者(S.Ogawa)が導入したものであるが、この他にも応用方面ではヴォラティリティー推定問題におけるデータの一変換方式として現れることが知られている(cf. P.Malliavin et al, 2007)。 確率フーリエ変換は対象となる乱関数の確率フーリエ係数(SFC)から構成されるので、このSFCの定義に用いられる確率積分により異なったSFTが可能である。上述のフレドホルム型積分方程式の研究では研究代表者(S.Ogawa 1979)が導入した非因果的確率積分(即ち Ogawa Integral)が、またヴォラティリティー推定問題では伊藤積分が使用される。平成25および26年度前半は伊藤積分およびその拡張形である Skorokhod 積分で定義される場合について研究し、成果は3編の論文として欧文学術誌で発表し、国内外の研究会でも講演を行った。 とことろで、ここまでの研究はIto-Wienerのカオス理論に依拠して議論が展開されているが、そこで得られる逆変換は「分布の意味」での逆変換の域を出ていない。これを乱関数自体の(すなわち同じ確率空間上での)逆変換が可能であるかについての研究は、特にその意味での逆変換公式や手順の確立は、純理論的にも応用理論的にも極めて重要である。平成26年度後半は焦点をそこに移した研究を開始し、伊藤積分の場合と非因果的確率積分(Ogawa Integral)の場合について、出発点となる基本的な結果を得、それぞれを欧文学会誌に投稿(一つは既に出版、一つは準備中)し、また国内外の学会や研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非因果的確率解析の主たる対象は確率的関数方程式(確率微分方程式、確率積分方程式、確率偏微分方程式等々)である。従って、非因果的確率積分方程式の研究で研究代表者(Ogawa,S)が導入した確率フーリエ変換の基本的性質の理論的解明は最重要課題の一つである。平成26年度前期までは Wiener Chaos(即ち、Wiener-Ito Multiple Wiener Integrals)理論の枠組みでの結果(分布の意味での逆変換)を得ていたが、平成26年度後半からは、分布の意味での逆変換の可能性の解明にとどまらず同じ確率空間内での逆変換の可能性について基本的な結果を多く得ており、この点で当初の研究計画よりも更に進んだ領域に研究を進めることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
しばらくはこれまでの研究方針に従い、非因果的確率解析の純理論的側面に集中して研究を進めていく、すなわち;研究の具体的課題としては、平成26年度の研究の流れに沿って、確率フーリエ変換の(「分布の意味の」変換としてではなく、関数空間内の変換としての)逆変換公式(あるいは手順)の確立を目指す。とくに小川積分に基づく非因果的確率解析の枠内での理論展開は重要であり、着実に研究を進めて行きたい。これとは別に関数論の観点から非因果的確率積分(小川積分)の性質を研究し、来年度(平成28年度)以降の研究展開に備えて基礎的準備を行う。
成果の発表と研究交流の方法としては、国内外の研究会に参加してこれまでの成果を講演の形で発表して、研究の重要性についての認識を広めると同時に共同研究の可能性も探る。また新しい結果が出るごとにこれまで同様、欧文学術誌に投稿し普及を計る。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内研究者(1名)を招待して討論をする計画であったが、代表者と招待者の日程調整がつかず中止したため、国内旅費と講演謝礼として準備していた謝金が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は新しいOS(Windows 8)を装備したノートパソコンを新規購入の予定であり、繰越額はこれの資金に回すことにした。
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