研究課題/領域番号 |
26400155
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研究機関 | 一般財団法人ファジィシステム研究所 |
研究代表者 |
岡崎 悦明 一般財団法人ファジィシステム研究所, 研究部, 特別研究員 (40037297)
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研究分担者 |
本田 あおい 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (50271119)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Shepp 空間 / r階 Shepp 空間 / 準距離 / 関数空間 / ファジィ測度 / Lp 空間 / 距離付け定理 / 位相線形空間 |
研究実績の概要 |
Lp 関数f の定めるShepp 空間 Λp(f) の線形構造、位相構造および数列構造の研究から発展し、従来の1階差分型 Shepp 空間Λp(f) を拡張し、任意の実数 r > 0 に対して、r階差分を用いた r階 Shepp 空間 Λp,r(f) の導入の可能性を検討した。まず非整数階差分作用素の Lp 有界性を証明し、この結果の一部は「Lp の非整数階差分作用素」と言うテーマで取りまとめ発表した。 Shepp 空間の準距離位相構造の研究から「線形構造を持つ準距離空間」の一般論の展開可能性が見えてきた。準距離空間の概念は従来はあまり研究がなされていなかった分野である。本研究でこれに取り組み、準距離空間の新たな性質についての結果を発表した。そこでは、準距離空間の完備化、距離付定理、ベールの性質について報告した。 準距離を持つ関数空間の具体例として、劣加法的ファジィ測度の作る Lp 空間を発見した。ファジィ測度に関する Lp 空間とその dual については従来ほとんど研究されていない分野である。この空間は一般にはノルム空間にはならないが自然に準距離構造が定義できることを証明した。本研究では、Choquet 積分 および 菅野積分についてそれぞれ Lp とその dual space を導入しその性質を調べた。特に距離付定理を利用して、準距離の2分の1乗(これも再び同じ位相を定める準距離になる)に関する重要な不等式を証明した。 Shepp 空間の線形構造の研究からの発展として新たな L_0(μ) (=測度 μ に関する可測関数の空間、ただしμは無限測度とする)の位相線形部分空間 M を特定しその性質を調べた。これは L_0(μ) の最大の位相線形部分空間となるものである。空間 M は truncated L_∞ space として解析的に表現できることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来からの Shepp 空間の研究の方策である線形構造、位相構造および数列構造の解明については、r階 Shepp 空間の研究へと自然に発展した。r階 Shepp 空間の研究においても、準距離関数の導入とその数列評価、内側近似空間および外側近似空間の特定と準距離構造の解明には、従来の方策が適用できるし、研究内容がさらに豊富になりつつある。 Shepp 空間の研究から新たな研究対象が発生していることは重要である。具体的には以下の新しい関数空間の構成に成功している。 劣加法的ファジィ測度のつくる Lp 空間とその dual の導入、およびその性質の解明。Choquet 積分および菅野積分についてはすでに着手済みである。その他の種々のファジィ積分や具体的応用が考えられる Inclusion-Exclusion integral についても考察したい。 L_0 の位相線形部分空間の研究は従来にない興味ある性質を持つ空間である。測度が無限測度のとき L_0 自身は位相線形空間ではない(スカラー倍は連続にならない)。この部分空間は Shepp 空間の内側近似空間の概念をヒントに特定されたものである。 従来の数列型 Shepp 空間から進んで、連続型の Shepp 空間の研究も視野に入ってきている。さらに、weighted Shepp 空間も重要な研究テーマになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究に引き続き,一般の p の場合のr 階Shepp空間Λp,r(f) について,その線形構造,位相構造および数列構造を研究する。以下の研究課題を設定し研究する。 (1) r 階Shepp 空間Λp,r(f) の内側近似空間の導入とその構造の特定,特に linear quasi-metric が導入できるかどうかの検討を行う。(2) r 階Shepp 空間Λp,r(f) の外側近似空間の導入とその構造の特定,特にその線形構造と doubling condition との相互関連を解明する。(3) 実際の応用上は weighted Shepp 空間まで拡張する必要がある。どの程度の weight を載せたら良いのか,線形構造,位相構造および数列構造はどうなるのかを考察する。 更に非数列型のShepp空間 Γp(f) を新たに導入し,その線形構造,位相構造および関数空間構造の研究を行う。ここでも線形準距離の概念が重要な役割を果たすであろう。Shepp 空間の研究の過程で新たに出現した諸問題にも取り組みたい。具体的には (1) 非加法的測度の作る Lp空間とその dual の研究。既に先述したようにここでは準距離が重要な役割を果たしており、Shepp 空間の手法が有効に適用されることが期待できる。(2)L_0 の部分空間、およびtruncated Lp 空間の研究。(3)weighted Shepp 空間の研究,などを視野に入れた研究を行う予定である。研究推進のため,研究分担者:本田 あおい 氏,研究協力者:佐藤 坦 氏,をメンバーとする定期セミナーを開催し,内外の研究集会への積極的参加と情報収集・情報交換を行い,内外の研究者を招聘し関連するテーマについて討論を行う。得られた結果については,適宜内外の研究集会において研究発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートPC購入時にモバイルSIMを同時購入予定であったが、モバイルSIMは個人購入時のみ同時購入可とのことで、購入をしなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度物品費として使用する。
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