空間3次元等高面法によるスパイラルステップの数理モデル研究については残念ながら進展はなかった。今後の課題である。 他方、クリスタライン曲率流方程式による多角形型スパイラルステップの運動の変分法的アプローチについて、その逐次近似的解法の研究を行った。曲率流方程式による界面運動の変分法的アプローチでは界面の運動を、対象とする界面の面積およびその元の位置からの距離による汎関数の最小点として定式化する。これにより時間離散的な界面運動の近似列を構成する手法で、今日ではこのアプローチを符号付き距離関数による等高面法を組み合わせる手法が提案されている。本年度の研究ではこの手法を渦巻曲線の運動に拡張した。本研究の最も本質的な困難は、そのアルゴリズムに界面からの符号付き距離関数が本質的に用いられているのに対し、渦巻曲線からの符号付き距離関数は不連続になってしまうことである。これを解決する方法として、本研究では符号付き距離関数を定数倍してカットオフした局所的距離関数を用いる方法と、符号付き距離関数の代わりに等高線法の関数をそのまま用いる方法の、二つの方法を構築した。本年度の研究ではこれらの逐次近似解法による数値計算法を確立した。これの数学解析については今後の課題として、引き続き研究を行っていく。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果について、まずは曲率流方程式の等高面方程式に対し、不連続関数による定常解を構成した。この成果は、バンチング現象など解が不連続化を起こす微分方程式に対し、その不連続関数そのものを用いて微分方程式の解を構成しうることを示すものと考える。また、研究機関全体においてはクリスタライン曲率流方程式によるスパイラルステップの運動についていくつかの解析手法を構築することが出来た。この研究は綾織り模様、バンチング現象など複雑な模様を形成する界面現象の研究へと繋がるものと考える。
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