幅が狭い球面上の測地距離による円環領域において、Brezis-Nirenberg問題を考え、正値球対称解からの分岐問題を考えた。球面上の測地距離による円環領域においては、正値球対称解の一意性は一般的には成り立たないが、幅が狭い場合は正値解の一意性が得られることを用い、球対称な関数空間での正値球対称解の非退化性を導き、正値球対称解から非球対称解が分岐する結果を得た。同じような非球対称解の分岐を議論している論文において、ある関数の微分可能性を加藤の補題を用いて示している部分があり、使われている加藤の補題のしっかりとした参考文献が見つからないため、陰関数定理からその関数の微分可能性が得られることを示し、議論を明瞭にした。 また、球面上の測地距離による球領域において、非協力的な楕円型方程式のシステムを考え、ある固有値に対応する自明解からの非自明な解の分岐について議論した。考えている問題は変分構造を持ち、汎関数はn次元特殊直交群に対して不変なため、問題はn次元特殊直交群に対して同変になる。各固有値に対応する有限次元固有空間はn次元特殊直交群の表現になることを用い、同変写像度の理論を用いることで、ある固有値に対応する自明解からの非有界な非自明解の分岐や、他の固有値に対応する自明解とをつなぐ非自明解の分岐などの結果を得た。 ユークリッド空間の円環領域における楕円型方程式に対する正値球対称解の一意性について、Kolodoner-Coffmanの方法とある恒等式を用いて一意性の結果が得られることについての見通しをつけた。
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