研究課題/領域番号 |
26400163
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 孝明 京都大学, 情報学研究科, 名誉教授 (70026110)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非線形偏微分方程式系 / 大域的解析 / 流体方程式 / 熱対流問題 / Poiseuille 流 / 計算機援用解析 / CIP法 |
研究実績の概要 |
圧縮性粘性熱伝導性流体の水平な帯状領域での熱対流の初期境界値問題に関して、その非圧縮性極限を考慮に入れた定式化を行った。その線形化方程式系の場合に時間大域的にパラメーター L: L = ( Tu + Tl )/(2 beta d ), Tu, Tl は上下の温度、beta は温度勾配、d は層の厚さ。 に関する一様評価が得られた。このパラメーターを大きくした極限で非圧縮性の Oberbeck-Boussinesq 方程式系が得られることを示した。ただし、温度に関する方程式に圧縮性からの修正項が入る事も分かった。 時間発展のある偏微分方程式系の数値解法に精度の良い差分解法として Cubic Interpolation Pseudo-Particle ( CIP ) 法がある。精度が良いために構成が複雑でその安定性解析はできていなかった。最も簡単な線形移流方程式を解く CIP 法の安定性と収束性を考察し、それが強安定にはならないが弱安定である事の証明を行った。 圧縮性粘性気体の平面 Poiseuille 流の Mach 数と Reynolds 数に関する安定性を考察し、 Mach 数が大きければ Reynolds 数が大きくなくとも流れが線形不安定になる事を示した。Mach 数が零の極限と考えられる非圧縮性粘性流体の平面 Poiseuille 流の線形不安定性を与える Reynolds 数が非常に大きいことと対照的である。その不安定性を与える固有値は、複素平面の虚軸を横切ることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧縮性粘性流体の熱対流問題において非圧縮性極限を考慮に入れた解析は、時間依存の場合にはほとんど見かけられなかった。その定式化が出来たことと、線形の場合であるが上記パラメーター L の無限大での極限が対応する Oberbeck-Boussinesq 方程式系になる事の証明ができた。 偏微分方程式の精度の良い数値解法である CIP 法(3次多項式補間特性曲線法)の有効性の検証とその収束性証明を線形移流方程式に対して得ることができた。強安定性ではなくて弱安定性であったことがその扱いの難しさの一つであった。 圧縮性流体の平面 Poiseuille 流れの安定性について、非圧縮性流体( Mach 数零 ) の時の安定性と比べて Mach 数が大きければ、はるかに小さい Reynolds 数の時に不安定になることが示せた。Reynolds 数が小さく Mach 数も小さいと仮定すると流れが非線形安定性を持ち時間減衰すると云う先行結果にも対応している。
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今後の研究の推進方策 |
圧縮性粘性流体の熱対流の初期境界値問題における線形の場合に得られた大域的一様評価の結果を論文にまとめる。さらに、はるかに系が複雑である非線形の場合への取組みを始める。 Oberbeck-Boussinesq 方程式系の場合に大域的な分岐構造を計算機援用解析として進め、時間周期解などが得られるかも調べる。 CIP法の安定性をもう少し一般的な偏微分方程式の時に考察する。またその有効性を、困難が予想される強凸性の無い Hamiltonian 系(常微分方程式系)の解と対応する Hamilton-Jacobi 偏微分方程式の解との比較を数値計算によって調べる。 圧縮性粘性流体の平面 Poiseuille 流に対して得られた不安定性(虚軸を横切る固有値)を活かして、時間周期解(周期的進行波解)への分岐を調べる。 非圧縮性粘性流体の定常解を得る Chorin の方法を検討し、その有効性を Navier-Stokes 方程式や Oberbeck-Boussinesq 方程式の時に検証する。
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