研究課題/領域番号 |
26400164
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
深尾 武史 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (00390469)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 力学的境界条件 / 体積制約条件 |
研究実績の概要 |
時間依存のある体積制約条件に対する、抽象発展方程式の可解性の理論を応用し、力学的境界条件下でのAllen-Cahn方程式に領域の内部と境界で体積制約条件を課した問題の可解性について結果を得た。力学的境界条件の構造から、ある適切な条件下では未知関数は領域の内部と境界での積分量の和が保存されるのが自然である。そのため、本研究の課題の1つであるLagrange乗数による相補性条件について、既存の抽象理論を応用し、新たな課題として適応可能な力学的境界条件下での問題について、まずはAllen-Cahn方程式について相補正条件を弱解の定義に採用し、弱解の存在と一意性について考察した。領域の内部と境界で異なるポテンシャルをとる場合を設定し、これらポテンシャルの間に適切な支配不等式を仮定することでより広いクラスを取り扱える設定となっている。 二種の金属の相分離を記述するCahn-Hilliard方程式に対して、よく知られている第2種境界条件下でのCahn-Hilliard方程式の取り扱いを基本に、化学ポテンシャルに対してのみ第2種境界条件を課し、相変数には力学的境界条件を課した問題を考察し、化学ポテンシャルの境界条件からくる内部での保存条件は方程式の構造として保ち、境界上での体積保存を付加条件とみる問題を新たに取り上げた。この場合にも相補正条件を弱解の定義に採用し、領域内部の積分量を0とする部分線形空間を基礎空間に選んだ発展方程式の抽象理論を応用することで、弱解の存在を証明することができた。連続依存性については既存の結果を直接適応することができた。この場合、考えられていた相変数の領域内部の積分量に対するLagrange乗数と新たに付加された条件からくる相変数の境界上での積分量に対するLagrange乗数の2つが異なる形で登場する点に注意したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では流体方程式を中心に取り扱うところであったが、既存の結果が応用できる問題として、力学的境界条件の課題が新たに見つかったため、まずは第1段階として、放物型方程式ならびに連立系に対する力学的境界条件を課した問題の研究に取り組んだ。これを足がかりとして、さらに新たな課題が発見され、幅広い問題まで既存の発展方程式の抽象理論が適応できることが明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では付加条件として、体積保存条件を考慮したが、本来力学的境界条件が持つ性質として、方程式そのものの構造として内部と境界の積分量の和の保存則がある。この点についていくつかの未解決問題が見つかったため、引き続き、力学的境界条件を中心とした研究を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋古書購入に計画していた経費のうち、入手不可能であった古書の経費が翌年度へ繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
同様の内容の書かれている図書の購入費として計上する。
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