研究課題/領域番号 |
26400165
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
峯 拓矢 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90378597)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数理物理 / 関数解析学 / 関数方程式論 / 解析学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は(1)2次元ユークリッド平面上での2点にアハラノフ・ボーム型磁場がある場合の散乱振幅の解析,および(2)磁場付きシュレディンガー作用素のスペクトル・シフト関数の定義に関する研究を行った.(1)については2001年の伊藤宏・田村英男による散乱振幅の高エネルギー漸近公式の結果が知られているが,今回得た結果では磁束の量子化条件の下で低エネルギー領域を含むあらゆるエネルギーで成り立つ散乱振幅の厳密な表示を得た.この表示は楕円座標・マシュー関数を用いた比較的収束の速い無限級数で表され,数値計算により高エネルギー領域での伊藤・田村の漸近公式との一致が確かめられた.さらに,3次元空間において,無限に細いリングに閉じ込められた磁場を考え,やはり磁束の量子化条件の下で,散乱振幅の厳密解が扁平回転楕円体座標・回転楕円体波動関数を用いて表されることを示した.これらの結果を平成26年10月に行われた研究集会「量子場の数理とその周辺」において発表し,同研究集会の講究録に投稿した.(2)については2006年の J. Borg の結果,2008年の田村英男の結果が知られているが,いずれもスペクトル・シフト関数を定義する跡公式を適用できる関数のクラスが制限されていた(前者では指数関数のみ,後者では0のまわりで定数になる関数のみ).今回の研究では,Bessel 関数および一般超幾何関数を用いて跡公式を書き下すことにより,前2結果を含むより一般的な結果を得た.この手法はさらに一般の多様体(双曲多様体など)上の磁場付きシュレディンガー作用素にも一般化されることが期待され,ワイルの漸近公式の詳細な解析への応用が見込まれている.さらに,(1)で扱った量子化された2点アハラノフ・ボーム磁場の場合については,具体的なスペクトル・シフト関数を書き下し,田村の結果との数値計算による比較を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2点にアハラノフ・ボーム型磁場がある場合の散乱振幅に関しては期待した結果が得られ,論文発表も予定通り行われた.さらに,スペクトル・シフト関数についての新たな知見が得られ,今後の研究の発展が見込まれている.
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた磁場付きシュレディンガー作用素のスペクトル・シフト関数の定義に関する結果については,一般的な多様体上での定義および特殊関数を用いた計算を行っていく予定である.さらに,もう一つの研究課題である「周期的ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の分散型評価」に関しての研究も進める予定である.こちらに関しては現在東北学院大学の神永正博氏との共同研究を進めており,今年度中の結果発表を目指していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は7月に行われる「XVIII International Congress on Mathematical Physics」などの複数の海外出張,また平成27年9月・平成28年1月に行われる研究集会の開催補助を予定しており,研究代表者および招待講演者への謝金・旅費の確保が必要である.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は7月に行われる「XVIII International Congress on Mathematical Physics」などの研究集会への国内・海外出張,また連携研究者の神永正博氏・野村祐司氏との研究連絡を行うために旅費を使用する予定である.また,数理解析研究所で行われる「作用素論セミナー」,および平成27年9月に福井で行われる研究集会・平成28年1月に金沢で行われる研究集会の開催を補助するため,招待講演者への謝金・旅費を支払う予定である.さらに,研究に必要な学術書および論文作成に必要なパーソナル・コンピュータおよび関連ソフト購入のため,物品費を使用する予定である.
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