研究課題/領域番号 |
26400165
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
峯 拓矢 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 准教授 (90378597)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数理物理 / 関数解析学 / 関数方程式論 / 解析学 |
研究実績の概要 |
平成27年度に得られた主な結果は下記の2つである。 1.Kronig-Penney モデルに関する分散型評価 Kronig-Penney モデルは可解な1次元周期的シュレディンガー作用素として古くから研究されており、そのスペクトル分解・解核作用素等は計算されているが、そのシュレディンガー時間発展作用素に対する分散型評価は知られていなかった。平成27年度に研究代表者は神永正博氏との共同研究で、Kronig-Penney モデルに対する各バンドに制限したシュレディンガー時間発展作用素の分散型評価に関して、時間 t の -1/3 乗で与えられる減衰評価を得て、その係数のバンド番号に関する漸近的評価を与えた。 これは、通常の分散型評価で得られる t の -1/2 乗の減衰よりも遅く、バンド・ギャップの存在によるある種の共鳴効果を表すと解釈されている。この結果に関して数回の学術講演を行い、現在神永氏との共著の論文を学術雑誌に投稿中である。 2.Poisson 型ランダムδ磁場に関する IDS について Poisson 型ランダムδ磁場に関する Integrated Density of States (IDS) N(λ)について、平成26年度に研究代表者は野村祐司氏との共同研究でそのスペクトル下端における指数減衰評価(リフシッツ・テイル)を証明し、学術雑誌に投稿した(平成28年度に出版が認められた)。平成27年度は IDS のさらに精密な評価を得るため、IDS のラプラス変換 L(t) の t に関する展開係数が、複数のδ磁場における跡公式を用いて計算できることを証明した。この結果とJames Borg 氏による跡公式を用いれば展開の初項の係数が得られ、さらに磁束が量子化されている場合には平成26年度に得られた楕円座標・Mathieu 関数による表示を用いれば第2項の係数も得られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kronig-Penney モデルに関する結果は予定通りに得られ、論文も投稿中であるが、まだ未解決の問題も残っているため次年度以降の課題としたい。Poisson ランダム磁場の IDS に関する結果は、より一般な磁場中のシュレディンガー作用素に対するスペクトルシフト関数に対する結果と合わせて現在執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.周期ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素に対する分散型評価・散乱理論に関してはまだ特別な場合(Kronig-Penneyモデル)を扱ったのみであるため、結果の一般化を行う予定である。周期ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素に関する研究、特にスペクトル・ギャップやバンド関数に対する研究はかなり深い部分まで行われており、それらを援用すれば分散型評価を得ることは十分期待できる。これを本年度の第一目標としたい。 2.平成28年3月に Hynek Kovarik 氏と研究連絡を行い、磁場が付いた場合の Hardy-Rellich 型不等式に関して議論を行った。特に、2次元で磁場が滑らかな場合の Rellich 型不等式はまだ一般的な結果が得られておらず、この場合に関する研究を行いたい。この問題は、Kovarik 氏が研究している磁場付きシュレディンガー作用素に対する分散型評価の問題とも関わっており、この話題に関しても研究を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は2回の海外出張、および国際研究集会開催に掛る講演者旅費の援助が必要であったが、海外出張に関しては先方からの旅費の支給、国際研究集会においては他教員からの旅費の補助があったため、予想よりも支出が少なかったことが原因と思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度はアメリカ・ヨーロッパにおいて関連分野の国際研究集会が開催されるため、その参加費用へと充てる。さらに、ヨーロッパ(チェコ・イタリア・フランス)に在住する関連分野の研究者との研究連絡に掛る旅費に用いる。
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