研究課題/領域番号 |
26400167
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西谷 達雄 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (80127117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 横断的強双曲系 / 包合的特性多様体 / シンプレクティック特性多様体 / 局所化系 / 強双曲系 / 伝播錐 |
研究実績の概要 |
一般のm階の微分作用素に対してm次特性集合は滑らかな多様体と仮定し,微分作用素のm次特性多様体における局所化を考える.この局所化の伝播錐がm次特性多様体に横断的でありかつ局所化が特性多様体の法束で狭義双曲型多項式となるときGevrey強双曲性指数はm/(m-2)である.一方Ivriiによればこの結果は最良であることが分かる.mxmの一階系においても行列式の局所化がこの性質を持つとき系は初期値問題の適切性に関してよい性質をもつことが予想される.そこでG.Metivierと共同で系の行列式のm次特性集合が滑らかな多様体でかつ包合的な場合,行列式の局所化が特性多様体の法束で狭義双曲型多項式ならば系はL2適切であり,従って特に強双曲系であるとを証明した.この結果はKyoto Journal Mathに掲載が決定している.さらに行列式の局所化が特性多様体の法束で狭義双曲型多項式となる系を「横断的狭義双曲系」と呼ぶことにしこの系が強双曲系であるかどうかを研究し,G.Metivierと共同で系の行列式のm次特性集合が滑らかなシンプレクティック多様体である横断的狭義双曲系は強双曲系であることを示した.さらにm次特性集合が滑らかな包合的多様体でもなくシンプレクティック多様体でもない場合には何が起こるかを探るためにMetivierが以前に与えた3x3の系で一様対角化可能ではあるが初期値問題がC無限適切とならない複素パラメーターaを含む例を考察し,この例に対してiaが[-1,1]の区間に属していなければこの系に対する初期値問題が次数が2より大なGevreyクラスでは局所可解でないこと,さらにiaが区間(-1,1)に属していればこの系は強双曲系であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mxmの一階の微分方程式系において主表象の行列式の局所化が特性多様体の法束で狭義双曲型多項式となる系を「横断的狭義双曲系」と呼ぶことにしこの系が強双曲系であるかどうかを研究し,G.Metivierと共同で系の行列式のm次特性集合が滑らかな多様体でかつ包合的な場合,横断的狭義双曲系はL2適切であり,従って特に強双曲系であるとを証明した.さらにm次特性集合が滑らかなシンプレクティック多様体である横断的狭義双曲系は強双曲系であることの証明にも成功した.この横断的狭義双曲系はGevrey強双曲性を一階の系で考察する際に現れる自然な概念であり,この意味でも研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
m次特性集合が滑らかな包合的多様体でもなくシンプレクティック多様体でもない場合の横断的狭義双曲系の初期値問題の適切性についての研究を推し進める.G.Metivierの例によってこの場合には主表象の行列式の局所化の伝播錐とm次特性集合との関係からだけでは適切性が判断出来ないことが分かっている.そこで系そのものの局所化系を定義し,この局所化系と横断的狭義双曲系の初期値問題の適切性との関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
J.Rauch(Michigan大学,アメリカ), F.Colombini(Pisa大学,イタリア)と双曲系に対するGevreyクラスでの初期値問題の適切性に関する共同研究を行っているが2016年4月のピサにおける共同研究およびその後のメールを通じての共同研究で系の特徴に基づいた興味深い結果を大筋で得た.この結果を2017年の2月にピサのColombiniのもとに3人であつまり2週間ほどでまとめあげ投稿する予定であった.しかしながらColombiniとRauchの日程調節がつかず2017年5月までこれを延長せざるを得なくなった.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年の5月にイタリアのピサ大学を訪問しF.ColombiniおよびJ.Rauchと2週間程度の共同研究を行う.そのための旅費として使用する.
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