研究課題/領域番号 |
26400169
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
谷口 雅治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30260623)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多次元進行波 / Allen-Cahn方程式 / 国際研究者交流(Canada) |
研究実績の概要 |
双安定な反応項をもつ拡散方程式の代表例の一つが,Nagumo方程式またはAllen-Cahn方程式とよばれる反応拡散方程式である。Nを3以上の整数とし,N次元空間においてこの方程式のもつ進行波を調べる。本研究の目的は,(N-1)次元空間においてなめらかな境界をもつ狭義凸図形が与えられたときに対応するN次元進行波が与えられることを示すのが本研究の目的である。 研究の背景は以下の通りである。2次元V字型進行波が Ninomiya-Taniguchi (JDE 2005)で示された。また進行軸にたいして軸対称なN次元進行波解が Hamel, Monneau, Roquejoffre (DCDS-A 2005, 2006)により示された。角錐型進行波が Taniguchi (SIAM J. Math. Anal. 2007)および Kurokawa-Taniguchi (Proc. Roy. Soc. Edinburgh 2011)により証明された。2次元平面においてなめらかな境界をもつ狭義凸図形が与えられたとき,これに対応する進行波が存在することがTaniguchi(DCDS-A, 2012)により証明された。これを一般のN次元において研究することが本研究の目的となる。平成27年度において私は,(N-1)次元空間においてなめらかな境界をもつ狭義凸図形において「等幅拡張によって一致する」という同値関係を導入した。またこれらの狭義凸図形に対してN次元進行波が定まることを証明した。N次元進行波が位相のずれを除いて一致するための条件が元の(N-1)次元図形が上記の同値関係を満たすことであることが証明された。これらの成果は,Taniguchi (SIAM J. Math. Anal. 2015)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Nagumo方程式または unbalanced Allen-Cahn方程式とよばれる反応拡散方程式において, (N-1)次元空間においてなめらかな境界をもつ狭義凸図形が与えられたときに対応するN次元進行波が与えられることの証明に成功し,その成果が Taniguchi (SIAM J. Math. Anal. 2015)に掲載されたことにより本研究の当初の計画の一部が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
(N-1)次元空間においてなめらかな境界をもつ狭義凸図形が与えられたときに対応するN次元進行波が与えられるという事実は,反応拡散方程式または反応拡散方程式系において一般に成立する基礎事実の一つであることが期待される。本研究の今後の推進方策としては,その実例を挙げるために,協同的な反応項をもつ拡散方程式系(cooperation-diffusion system)において,N次元進行波が(N-1)次元空間においてなめらかな境界をもつ狭義凸図形に対応して与えられることを証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画を上回って実際の研究が進んだため平成27年度の予算執行が請求額より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年6月に“The Tenth East China Partial Differential Equations Conference"における招待講演のためEast China Normal University(中華人民共和国)を訪問する。また同年7月に"2015 KAIST CMC Mathematical Biology Conference"における招待講演のため韓国Kaistを訪問する。これらの海外出張旅費に繰り越した研究費を使用させていただく。
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