研究課題/領域番号 |
26400169
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
谷口 雅治 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (30260623)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 進行波 / 反応拡散方程式 / 非対称 |
研究実績の概要 |
N次元空間においてAllen--Cahn方程式を考える。(N-1)次元空間における凸図形が一つ与えられたときにこれを切断面とするN次元進行波の存在を証明することが本研究の目的である。与えられた凸図形はその境界がなめらかであり,主曲率がすべて正であることを仮定している。2015年に私はこのN次元進行波解の存在の証明に成功し,米国の学会誌 SIAM J. Math. Anal.にその論文が掲載された。またこの成果については日本数学会を始め国内外の 研究集会で私は講演を行い報告を行った。Allen--Cahn方程式はその拡散効果が等方的であり,異方性をもたない。それにもかかわらず進行軸にたいして非対称な形状の進行波が存在することを本研究成果は示している。またその安定性を調べたところ,与えられた擾乱が無限遠方で減衰するならば,この進行波は漸近安定であることがわかった。 私はつぎに「与えられた凸図形を切断面とする進行波解」はAllen--Cahn方程式に限らず 他の非線形反応拡散方程式にたいしても存在するのではないかと考えた。このため,Lotka--Volterra方程式をふくむ競合拡散方程式系(cooperation-diffusion systems)を N次元空間において考えた。競合拡散方程式系における「与えられた凸図形を切断面とする進行波解」の存在を私は2016年に証明し,米国学術雑誌 J. Differential Equationsに論文が掲載された。この進行波の安定性を調べたところ,無限遠方で減衰するいかなる擾乱に対しても漸近安定であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(N-1)次元空間において与えられた凸図形を切断面とするN次元進行波の存在証明をAllen--Cahn方程式およびLotka--Volterra方程式をふくむ競合拡散方程式系において行い,その論文が学術雑誌に掲載されたことにより研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Allen--Cahn方程式における「(N-1)次元空間において与えられた凸図形を切断面とするN次元進行波」の存在および安定性の証明を与え,その結果は学会誌・学術雑誌に掲載された。 反応拡散方程式における進行波理論について,日本数学会のMSJ Memoirs編集委員会からの依頼を受け,そのシリーズに原稿を執筆し2017年に投稿した。現在,この原稿は査読中で査読が終わり次第,改訂原稿を再投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の研究成果の一部を日本数学会 MSJ Memoirsにメモワール原稿として投稿中である。現在査読中であるが,査読レポートがMSJ Memoirs編集委員会から届き次第,改訂した原稿を再投稿する必要がある。このため平成30年度も引き続きこの研究を遂行する必要が生じたためである。研究を進めると同時に,査読報告書にもとづき原稿を改訂し再投稿することが使用計画である。
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