研究実績の概要 |
Allen--Cahn方程式またはNagumo方程式とよばれる双安定な反応項をもつ放物型方程式をN次元ユークリッド空間で考える。ここでNは3以上の整数とする。これは異方性をもたない等方的な方程式である。この方程式のもつ進行波で未知のものを探索しその存在を証明することが本研究の第一の目的であった。進行軸にたいして対称性をもつ軸対称進行波の存在はHamel, Monneau, Roquejoffre(DCDS-A2005,2006)により知られていた。この進行波は進行軸に垂直な切断面が球となっている。また切断面が(N-1)次元の多角形となるN次元角錐型進行波の存在はTaniguchi(SIAM J. Math. Anal. 2007), Kurokawa--Taniguchi (Proc. Edinburgh 2011)などで知られていた。進行軸に垂直な切断面が楕円などをふくむコンパクトな(N-1)次元凸図形となるN次元進行波解が存在するか否かは未知であった。本研究では,(N-1)次元コンパクト凸図形を(N-1)次元多角形で近似する手法を導入した。すなわち,N次元角錐型進行波の側面の数を無限大にする極限をとることにより,この角錐型進行波が極限形をもつことを示し,その極限が「(N-1)次元のコンパクト凸図形」を切断面とするN次元進行波であることを証明した。得られた結果は米国応用数理学会誌 SIAM J. Math. Anal. に2015年に掲載された。 つぎに上記の結果は他の方程式系に対しても適用可能であるのではないかと考えた。Lotka--Volterra方程式をN次元空間全体で考え,「(N-1)次元区間で与えられたコンパクトな凸図形」を切断面とするN次元進行波の存在を証明した。得られた結果は J. Differential Equationsに2016年に掲載された。
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