研究実績の概要 |
変数係数双曲型方程式のエネルギー評価における初期値の係数の滑らかさの影響について: キルヒホフ方程式の線形化問題の一つと考えられる、伝播速度が時間変数に依存する波動方程式に対して、その初期値問題の解のエネルギー評価について研究を行った。定数係数波動方程式の解の滑らかさやエネルギーが保存されることは明らかである。変数係数の場合、係数が非退化かつ微分可能であれば、時間大域的な解の滑らかさは保証される一方で、エネルギーの保存や有界性は一般に成り立たない。本研究では、一般にはエネルギーの有界性が成り立たないような係数を持つ方程式に対して、Gevreyクラスのようなエネルギーのクラスよりも滑らかな初期値に対しては、エネルギーの有界性が成り立ちうることを証明した。このような設定の下で、エネルギー評価における初期値の滑らかさの寄与に関する結果は知られておらず、変数係数波動方程式の研究に新たな視点を与えるものである。またこの研究は、初期値の滑らかさが大域可解性の評価において本質的であると考えられるキルヒホフ方程式の研究においても、新たな解析方法を提供すると期待される。本研究は、Ebert-Fitriana-Hirosawa[EFH] で公表済みである。 [EFH] M. R. Ebert, L. Fitriana and F. Hirosawa, On the energy estimates of the wave equation with time dependent propagation speed asymptotically monotone functions, J. Math. Anal. Appl. 432 (2015), 654-677.
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