研究課題
キルヒホフ方程式は、非局所的な非線形性を持つ波動方程式であり、非線形係数が時間変数のみに依存することと、エネルギー保存則を持つことが大きな特徴である。前者は、定数係数波動方程式の摂動の立場からの既存の方法による精密な解析を困難にする要因となる一方、時間のみに依存する変数係数波動方程式に関する長年の研究成果、特に係数が特異性を持つ場合の解のレギュラリティーの評価の手法が応用できる問題であるとも考えられる。後者は、研究代表者が取り組んできた、変数係数双曲型方程式の解のエネルギーの漸近安定性の問題と深く関係しており、これら線形方程式の研究とキルヒホッフ方程式の研究の発展は、車の両輪のような関係である。以上の背景をふまえ、本課題に対する研究実績は次の通りである。1. 係数が特異性を持つ2階双曲型方程式の適切性と解のレギュラリティーの評価2. 時間に依存する質量項を持つクライン・ゴルドン型方程式のエネルギーの漸近評価1について: 本研究の立場によるキルヒホッフ方程式の大域可解性の問題では、方程式の非線形性が解のレギュラリティーに与える影響を評価することが最も重要である。ここでは、特にその評価に関連し、振動する時間変数係数を持った線形2階双曲型方程式の適切性に関する結果が得られた。(但し本研究成果は、より一般化された方程式に対する結果に拡張された後に研究論文として公表予定である。)2について: キルヒホフ方程式を含めた変数係数双曲型方程式において、研究が十分でないと考えられている解の低周波領域における評価の精密化の成功に伴い、キルヒホッフ方程式のある種の線形化方程式と考えられる時間変数に関して特異性のある質量項を持つクライン・ゴルドン型方程式に対して、そのエネルギーの漸近評価に関する結果が得られた。
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Annali di Matematica Pura ed Applicata
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10.1007/s10231-017-0705-9
Proceedings of the 11th ISAAC 2017, Trends in Mathematics, Research Perspectives, Birkhauser/Springer