非線形偏微分方程式においては、非線形性や空間次元、パラメータ等によって決まる臨界指数が存在し、その指数を超える毎に解の性質や挙動が劇的に変化することが知られている。今年度は、べき乗型の非線形項を持つ非線形熱方程式の解の漸近的性質について考察を行った。非線形熱方程式は、空間次元が11次元以上かつべき乗の指数がJoseph-Lundgren の指数より大きい場合、初期関数に応じて複雑な挙動を持つことが知られている。本研究では、初期関数が自己相似解のオーダーで減衰するCauchy 問題を考え、3次元以上に於ける解の時間大域挙動が、初期関数の空間無限遠方での挙動で決定されることを明らかにした。また、その性質と初期関数に関する連続依存性を用いることにより、自己相似解の減衰オーダーにおいて、初期関数に応じて複雑な挙動を持つ解の構成をすることができた。 非線形楕円型偏微分方程式の特異解の性質について考察を行った。本研究では、優Sobolev 臨界指数を持つ非線形問題に対して特異解の存在・一意性を示し、さらに有界な解の極限として特異解が得られることを示した。本研究課題の研究成果として非線形楕円型偏微分方程式の解構造および非線形放物型偏微分方程式の時間大域解の漸近挙動において、Sobolev 臨界指数、 Joseph-Lundgren 臨界指数の及ぼす影響を捉えることができたとともに、さらに解の事前評価においてスケーリング法を適用することにより、ある種の非線形楕円型偏微分方程式に対する iouville 型問題に帰着されることを示すとともに、その Liouville 型定理を導くことができた。
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