研究課題/領域番号 |
26400177
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
立川 篤 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50188257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | non-standard grwoth / boundary regularity / p(x)-energy |
研究実績の概要 |
汎関数の極値を与える写像・関数を求める問題を変分問題と呼ぶ。変分問題を「解く」際には、(1)ソボレフ空間の中で極値を与える写像・関数を求め、(2)それらが実際に元の問題が要求するレベルまで微分可能であることを示すという2つのステップによることが多く、このような方法を「変分問題における直接法」と呼んでいる。また、この2つのステップのうち特に(2)の方を「解の正則性の問題」と呼び、古くから多くの研究者によって盛んに研究されてきた。 変分問題で扱われる汎関数は、未知関数の微分に関する増大度のより、standard grwothとnon-standard growthの2種に分類されることが多い。本研究課題はNon-standard growthと呼ばれるタイプの汎関数に対して、上記の「解の正則性の問題」を扱うものである。 現在、特にp(x)ーgrowthと呼ばれる汎関数を扱っており、本年度はこのp(x)-growhの汎関数の最小値を与える写像の、定義域の境界上での正則性を研究し、予定通りの成果を得た。これは「適当な条件下で、p(x)-エネルギーと呼ばれるタイプの汎関数の、Dirichlet境界条件下での最小値を与える写像・関数は、その定義域の境界の近傍で特異点(連続でない点)を持たない」という結果で、standard growthの場合にDuzaar-Grotowski-Kronzらによって示されていた結果が、p(x)-growthに対しても成立するということを示している。この結果は論文として投稿し、Annales de l'Institut Henri Poincare (C) Non Linear Analysisに掲載が決定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の欄に記したように、本年度は境界上の正則性の問題を扱い、当初予想していた通りの結果を得ることが出来たので、「順調に進展している」と言えよう。一方、予想を越える結果が得られたり、予想していなかった新たなアイデアを得たといった類のことはなかったので、「当初の計画以上に」とは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果はすべてp(x)が2以上の場合に対してである。一方、最近、本研究代表者の指導学生であるK.Usubaにより、内部部分正則性については、1<p(x)<2でも成り立つことが示された。この結果は、本研究代表者らによって、p(x)が2以上の場合に対して得られていた結果、が1<p(x)<2の場合に対しても成り立つことを示している。すなわち、これらの結果から見る限り、p(x)=2は所謂「閾値」ではない。従って、2をまたがって変化する場合に対しても、これまでp(x)が2以上の場合に対して示してきた一連の結果の(ほとんど)すべてが、単にp(x)>1という条件のもとで示されて然るべきである。今後はこの方向で研究を進めていく。 p(x)が2以上の場合と、1<p(x)<2の場合とでは、得られた(また、得られるであろう)結果は同じでも、途中の計算方法はかなりことなる。従って、p(x)>1に対して示すにはこれらの計算方法を統一できる方法を探さなければならない。このための方策は現在模索中である。 また、現在、共同研究者のCatania大・Ragusa氏と、次なる問題として、微分の変数ごとに増大度が異なるダイプの問題を考えている。このタイプの問題は「非等方的(anisotropic)」と呼ばれている。この問題に対しては、着手したばかりで、問題点が山積されている。まずは、非等方的なソボレフ空間で、しかも変動指数をもったものを考え、そこでのルクセンブルグノルムに関する評価式を得なければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は学内業務に忙殺され、まとまった日程がとれなかったため、海外出張が出来なかった。そのため、旅費として計上していた予算の大半を使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は10月に、ナポリ大学へ出張を予定している。ナポリにはnon-standard growthの汎関数を研究してる強力なグループがあり、彼らとの研究連絡は極めて有意義である。 また、3月には変分問題の世界的権威であるMariano Giaquinta教授を招聘する予定であり、前記のナポリ大出張と合わせて、昨年度分の出張旅費も使用する予定である。
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