研究課題
本年度は,力学境界条件を課した,閉区間[-1,1]上の指示関数の劣微分項を含む Allen-Cahn方程式の特異極限問題を考察し,界面運動の挙動の解析を行った。ノイマン境界条件の場合と同様に,H^1 の dual space の位相で解析することにより,領域内と境界上,それぞれにおいて,指示関数の劣微分項の元の特異極限を明らかにすることができた。また,領域内と境界上,それぞれにおいて,指示関数の劣微分項の元の特異極限と解の特異極限関数との関連も明らかにすることができた。力学境界条件の場合,特異極限関数の境界値の性質も得ることができ,特異極限問題における力学境界条件とノイマン境界条件との相違を明らかにすることができた。この点が本年度の重要な研究成果である。また,力学境界条件を課したCahn--Hilliard 型の相転移モデルに対する境界最適制御問題を考察した。実際,適切な近似方程式や近似最適問題を提唱し,それを経由することで,力学境界条件を課したCahn--Hilliard 型相転移モデルの境界制御問題に対する最適制御解の存在とその性質を明らかにした。さらに,時間依存劣微分作用素に支配された抽象非線形発展方程式を考察し,解の一意性を必要としない特異最適制御問題の定式化・理論の構築を行った。Kobayashi-Warren-Carter により提唱された結晶粒界モデルでは,解の一意性が保証されていない。今年度構築した特異最適制御理論は,Kobayashi-Warren-Carterモデルには直接応用できないが,その方法論は有効であると考えている。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Math. Methods Appl. Sci.
巻: 40 ページ: 5--21
https://doi.org/10.1002/mma.3905
IFIP Conference on System Modeling and Optimization CSMO 2015: System Modeling and Optimization
巻: - ページ: 261--271
https://doi.org/10.1007/978-3-319-55795-3_24
Solvability, regularity, and optimal control of boundary value problems for PDEs, Springer INdAM Ser.
巻: 22 ページ: 281--304
https://doi.org/10.1007/978-3-319-64489-9_11
巻: 22 ページ: 255--280
https://doi.org/10.1007/978-3-319-64489-9_10
Advances in Mathematical Sciences and Applications
巻: 26 ページ: 313--379