研究実績の概要 |
本研究者は、ウエストボヘミア大学(チェコ)のRyjacek教授、Cada准教授らとの共同研究によって、辺着色されたトライアングルフリーグラフにおけるRainbow 4-サイクル(どの2辺も異なる色の長さ4のサイクル)を持つための最小色次数(各点に接続する辺で使われている色数の最小数)条件を与えた。昨年度は、この主張をより発展させるために、以下の問題をCada准教授や横浜国大の小関准教授と共同研究を行った。 すなわち、辺着色されたトライアングルフリーグラフ(長さ3のサイクルを持たないグラフ)を、完全2部グラフに制限した時、最小色次数の下限を改良できないか? 最初のRyjacek教授らとの結果によって得られた最小色次数の下限は(グラフの位数をnとすると)n/3である。完全2部グラフに制限することにより下限の改良が期待されたが、rainbowな部分グラフは非常に扱いが難しく、これまでのような有向グラフなどへの問題の置き換えによる手法がなかなかはたらかなかった。そこで、Ryjacek教授らとの結果の証明で利用した主張、辺彩色(同じ色の辺が端点を共有しない着色)された完全2部グラフK_{2,4}には、必ずrainbow 4-サイクルを持つという主張を利用することに方針を変え、以下の主張を得ることに成功した。 すなわち、辺着された完全2部グラフの最小色次数が3以上の場合、辺彩色された4-サイクルが存在する。4-サイクルは完全2部グラフK_{2,2}と同値であり、この主張を発展させて、完全2部グラフK_{2,4}の最小色次数の下限が得られれば、rainbow 4-サイクルに対する下限が得られることになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究実績の概要で述べたように、昨年度得られた辺着色された完全2部グラフが辺彩色された4-サイクルを持つための最小色次数の下限を発展させる。 すなわち、4-サイクルはK_{2,2}と同値であり、辺彩色されたK_{2,4}が存在するために必要な最小色次数が得られるように、上記の研究を発展させる。 特に、Gallaiによる著名な、rainbow C_3を持たない辺着色された完全グラフの構造定理のアナロジーとして、辺彩色されたK_{2,2}を持たない辺着色された完全2部グラフの構造を与える主張を構築する。さらに、この主張を一般化させて、辺彩色されたK_{2,3}、さらにK_{2,4}を持たない辺着色された完全2部グラフの構造を求める。ErdosとTuzaはGallaiの構造定理を利用して、辺着色された完全グラフがrainbow C_3を持つために必要な最小色次数を与えた。同様に、辺彩色されたK_{2,2}を持たない辺着色された完全2部グラフの構造から、辺彩色されたK_{2,4}を持つために必要な最小色次数を求め、完全2部グラフに対するrainbow4-サイクルを持つために必要な最小色次数問題を完結させる。 上記の研究が成功した場合、一般のグラフの場合を研究する。これまでのところ、最良な結果は、Ryjacekらとの我々の研究結果である。トライアングルフリーグラフに対するこの主張の下限n/3は十分ではないと予想されている。この下限を改良し、さらに一般のグラフに対する下限を求める。
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