研究課題/領域番号 |
26400192
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松浦 勉 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80181692)
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研究分担者 |
齋藤 三郎 群馬大学, その他部局等, 名誉教授 (10110397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生核 / 積分方程式 / 逆問題 / 離散化 / 数値計算 / 正則化 / ゼロ除算 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は我々のこれまでの数学としての再生核の研究成果をさらに工学・医学における具体的な問題レベルにまで展開して,工学,医学,産業界等に寄与することである. この課題に関連して,平成26年度より群馬大学医学部の松崎利行教授,廣村桂樹准教授と共同研究を開始した.これは腎臓糸球体上皮細胞画像による形態解析を我々の理論と画像解析,パターン認識によって行おうとするものであり,平成27年度には1編の論文とすることができた.また,平成27年度からは群馬大学医学部の向後晶子講師と蝸牛有毛細胞の組織化過程の定量化に関する研究を始めた.従来,組織化過程を示す細胞の収縮・伸長の計測は手作業でおこなっていたが,この方法は作業時間,結果の客観性に問題がある.我々は計算機による画像処理により作業の高速化・自動化,計測結果の客観性の保持を目指している.具体的には細胞膜形状のボロノイ線図による近似法をにより良好な結果を得て,向後講師が医学方面学会で報告済みである. 数学的な研究としては,一般化された再生核を積分方程式の解法に応用する研究をおこなっている.その成果は平成27年度8月の国際学会にて公表された.これは従来の再生核の定義(特徴付け)を拡張することにより,これまで扱えなかった積分方程式の解法にも応用可能とするものである.この研究に関しては3篇の論文,2件の学会発表,著書1冊の発刊をおこなった.これら我々の研究により,再生核の応用分野がさらに広がったと考えている. さらに,ゼロ除算に関して再生核理論の立場から新しい解釈を得ることに成功し,その成果を日本数学会にて発表した.現在は関数論の分野においてゼロ除算の有用性を見出すべく考察を続けており,成果を英文論文誌や平成28年度の数学会にて発表予定である.このような活動を通じて,我々のゼロ除算は海外でも国内でも認知が広がりつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医学部との新たな共同研究は順調に進んでおり,蝸牛細胞の変成に関する定量的評価法に関しては,群馬大学・医学系研究科の向後晶子講師(研究代表者),松浦(研究分担者)らの「上皮細胞間ジャンクションの再編成におけるDLG1の機能解析」が科研費(C)として平成28年度から4年間認められることとなった. 糸球体上皮細胞画像の解析に関しては,撮像状況,方向性の不均一に伴う画像の不鮮明さに起因する困難さをニューラルネットの「深層学習」によって打開しようとする試みも始めている.この研究に関しては1編の論文を公にすることができた. これらのことから,本課題の目的の一つである,我々の理論の医学的問題へ展開という観点から研究は順調に進んでいると考えている. 数学的研究という意味では一般化再生核を考案するができ,再生核の応用範囲を拡げたという意味で,大きな成果があった.またゼロ除算についての成果(具体的事例による意味の解明)も徐々に得られており,学会における認知も進みつつある.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,(昨年度から成果が得られ始めた)蝸牛有毛細胞の組織化過程の共同研究をさらに進める予定である.また,糸球体上皮細胞画像の解析に関しても(計算機環境を整え)「深層学習」でどこまで正確な分類が可能かを確認したい.研究で得られた成果は積極的に医学系学会で発表して,医学者から見た評価を得たいと思う. 数学的な研究に関しては,研究分担者と入念に打ち合わせて,1)再生核理論のより広い応用を考案すること,2)ゼロ除算の意義の明確化,3)ゼロ除算の考え方の関数論への応用 等について進めていきたいと考えている.これらについては日本数学会の秋季大会,春季大会での報告,英文雑誌への投稿を目指して研究を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
学務のため予定していた学会に参加することができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
主に画像処理関連ソフトの更新料,Matlab,Mathematicaのライセンス料,学会参加費,旅費,書籍などの資料代にあてる予定である.また,新規の計算機を導入し,さらにGPUを追加して計算機環境の充実も図る予定である.
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