研究実績の概要 |
本研究課題の目的は我々のこれまでの数学としての再生核の研究成果をさらに工学・医学における具体的な問題レベルにまで展開して,工学,医学,産業界等に寄与することである. この課題に関連して,平成26年度より群馬大学医学部の松崎利行教授,廣村桂樹准教授と共同研究を開始した.これは腎臓糸球体上皮細胞画像による形態解析を我々の理論と画像解析,パターン認識によって行おうとするものであり,平成27年度には1編の論文とすることができた.また,平成27年度からは群馬大学医学部の向後晶子講師と蝸牛有毛細胞の組織化過程の定量化に関する研究を始め,細胞膜形状のボロノイ線図による近似法と深層学習を用いた細胞膜生成により良好な結果を得て,医学関連学会で2件の発表を行った.またこの課題ではH28年度からは新たな科研費(向後講師が研究代表者,松浦は研究分担者)が採択された. 数学的な研究としては,一般化された再生核を積分方程式の解法に応用する研究をおこなっている.その成果は平成27年度8月の国際学会にて公表された.この研究は従来の再生核の定義(特徴付け)を拡張することにより,これまで扱えなかった積分方程式の解法にも再生核理論を応用可能とするものである.この研究に関して平成27年度には3篇の論文,2件の学会発表,平成28年度には3件の学会発表をおこなった.さらに我々の再生核理論研究の(数学的な)集大成としてSpringerから専門書(全452ページ)を出した.この著書はこの分野の今後のスタンダードとなると考えている. さらに,ゼロ除算に関して再生核理論の立場から新しい解釈を得ることに成功し,平成28年度は日本数学会にて5件の発表を行い,3篇の論文にすることができた.現在は関数論の分野においてゼロ除算の有用性を見出すべく考察を続けており,我々のゼロ除算は国内外で認知が広がりつつある.
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